目次
1.看護師の大半は病院・診療所で勤務している
看護師の転職先は病院だけではありません。転職ビギナーさんはついつい候補として「病院の看護師求人」にばかり目が行きがちですが、病院以外にもやりがいを持って働ける職場はたくさんあります。ここでは病院以外の転職例をいくつか紹介し、病院以外に転職をして成功した3人の方の体験談も掲載します。
2.看護師の病院以外での転職先例①訪問看護ステーション
訪問看護ステーションを必要とする患者の多くは、自立して生活を送ることが困難であると判断される方で、多くは高齢者である事もあり、注意深く状態の観察が必要です。病院のように患者のいる病室を訪ねるのではなく、患者それぞれの自宅を訪問し、病状を確認したり生活における介助、生活に必要なアドバイスを行ったりするのが訪問看護ステーションで勤務する看護師の業務になります。また患者さんによっては、がん末期、終末期にある患者が自宅で適切に生活を送ることが出来るように身の回りの世話をすると言う業務もあります。
基本的な日々の仕事の流れは、患者本人の自宅へ訪れ、バイタルの確認、入浴、排泄の介助を行うというのが業務になり、 その他、必要に応じて近隣病院と連携をしての医療処置や医療機器の管理なども看護師の仕事となります。 病院勤務とは違い、患者や近隣医療機関などと密な関係を築くことが必要になることも多いため、高いコミュニケーション能力が問われる仕事です。
3.看護師の病院以外での転職先例②デイサービス
・健康管理
朝、利用者が施設へ到着後、バイタルチェックを行い、健康状態を把握します。また、会話などを通じてその日の調子を読み取ったり、顔色などのチェックも欠かせません。この結果によって、その日の入浴が可能か否かを判断したりします。
・薬の管理
利用者が持参してきた薬を間違いなく投薬するために保管・管理し、確実に投薬します。こうした施設では、ほとんどの高齢者が薬を必要としているため、多くの人が薬を持参してきます。これらを間違った人に投薬してしまわないために、しっかりとした管理を行わなくてはなりません。また、錠剤やカプセルなどをPTP包装ごと飲んでしまうという事故も高齢者には多発しているため、これらを未然に防ぐために看護師が管理・投薬を行います。
・食事介助
食事介助は介護職員やヘルパーさんの仕事なのでは?と思う人も多いでしょうが、看護師も食事介助を行うこともあります。人手が足りないという事もあるのかもしれませんが、利用者の食事の状態、嚥下の状況なども把握するという意味では、医療知識が豊富な看護師が歓迎されるケースもあります。
・その他
レクリエーションの手伝いや準備なども、他の職員と共に行う事が多いです。デイサービスのような介護施設では、季節ごとにさまざまなレクリエーションが行われていて、様々な遊びも豊富に取り入れられており、これらが全てリハビリにつながるとされています。中には、食事を楽しみに来ている人、入浴を楽しみに来ている人、職員とのおしゃべりを楽しみに来ている人などもいて、日々の楽しみを求めてデイサービスを訪れる利用者に満足してもらえるようにヘルパーさんなどと協力していきます。
4.看護師の病院以外での転職先例③介護老人保健施設(老健)/介護老人福祉施設(特養)
・介護老人保健施設(老健)
「ろうけん」と呼ばれる事が多い施設です。介護老人保健施設は在宅への復帰を目的として医療ケアが行われている施設で、自治体運営です。介護保険の被保険者となっている人のうち、要介護1から要介護5に認定された比較的症状が安定している人なら利用できます。介護老人保健施設には医師が常駐しており、24時間看護も提供しているため、看護師の勤務にも夜勤があり、必要に応じて治療など医療処置が取られる事もあります。また、老健には医療従事者の配置基準があり、利用者の人数あたりで、医師・看護師・介護福祉士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などを一定数以上配置することが定められているために看護師の求人が安定的に出てきます。
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)
「とくよう」と呼ばれる事が多い施設です。こちらも自治体により運営されていて要介護3から要介護5までの人が入所できます。老健と特養の違いは、特養は身体や精神に重度の障害を持っているために在宅による介護が困難であるとされる人が入居できることになっているため、自宅へ戻るための支援というよりは人生の最期を迎えるまで居るのが前提だという点です。そういう点で、看護師の仕事は看護というよりも介護に近いものになると言えます。そして特養には、医師が常駐しておらず医療行為は行われないので、看護師の役割としても健康管理がメインです。医療の提供がありませんので基本の勤務は日勤のみが多く、場合によってはオンコールがあるといった程度です。
・有料老人ホーム
有料老人ホームは、民間企業などによって運営されているため、その特徴や入居基準などは様々です。例えば「住宅型有料老人ホーム」ではある程度身の回りの事が自分で行える人、「介護付有料老人ホーム」では要介護または要支援とされている人を対象としているなど、施設によって異なります。また、有料老人ホームは基本的には医師がおらず、看護師の仕事のメインは健康管理で、勤務も日勤が多いです。企業の運営方針によってはサービスの質や接遇を重視し、施設によってはオンコールがある事もあります。
5.看護師の病院以外での転職先例④一般企業(医務室・治験関係など)
・新薬開発系(CRC)
CRCはクリニカル・リサーチ・コーディネーターと呼ばれており、臨床試験(治験)が適正に行われているかどうかを監視するというのが主な仕事です。また、治験に参加する患者への詳細説明を行ったり、治験の実施までのスケジュール管理、治験に関わる各種データや資料の管理・収集など、治験に関連する様々な業務や、治験担当医師のサポートを行っています。
・新薬開発系(CRA)
CRAはクリニカル・リサーチ・アソシエイトと呼ばれており、臨床試験(治験)の実施における契約やモニタリング業務・回収・治験に関わる各種手続きなどが、全て適正に行われているかどうかを監視するのが主な仕事です。
治験には、その治験を依頼する側である「製薬会社」と、その治験を実施する側である「病院」が必要で、製薬会社側(依頼者側)の専門スタッフとして治験を監視する役割を担うのがCRA、病院側(実施者側)の専門スタッフとして治験を監視する役割を担うのがCRCです。依頼者側の立場に立ってその治験の契約段階から終了までの全体の監視を行うのか、実施する側の立場に立って臨床試験そのものの監視を行うのか異なります。また、これらCRCおよびCRAは、いずれも看護師の資格が必須ではないです。中には薬剤師の資格保有者などもいてバックグラウンドは様々です。しかし看護師として経験を積んできた人でCRCおよびCRAへチャレンジする人は多いです。年収が高く有名企業が多いというのも人気の背景にあります。
・企業内医務室・健康管理室
比較的規模の大きな企業などでは、企業内部に医務室・健康管理室・保健室を設置している事が多いです。こうした企業内の医務室・健康管理室等でも看護師の求人があります。企業内医務室の仕事は、主にその企業の従業員の健康管理を行う事とされていますが、怪我や病気、海外への出張などに関する健康管理だけでなく、最近ではメンタル面でのサポートの必要性も重視されてきています。メタボなどに関するケアや指導が行われる場合もあり、従業員の健康管理を引き受ける職種です。この企業内医務室での勤務は、企業のカレンダーに合わせた休日がとれる点・残業もなく定時で帰宅できる点などが大きな魅力で非常に人気があります。ですが欠員が出にくく、求人数自体が少なく、稀に求人が出たとしても一般的な求人誌などに掲載される事はなく、専門的な求人サイトに限定される事が多いです。
・フィールドナース
フィールドナースとは、医療機器メーカーや医薬品メーカーの営業に同行し、自社製品の販売サポートを行うという職業です。行き先は病院や施設などがほとんどで、多くの場合は、医師などに対しての医療機器の操作説明であったり、医薬品の説明となりますが、場合によっては、患者に直接医療機器の操作説明を行う事もあります。これまで着ていた白衣を脱ぎ棄て、スーツに身を固めて活躍する事になるものの、看護師時代の知識をフルに活かしていく事ができるため、心機一転、看護師からの転職を希望する人も多く、人気のある職業です。また、カレンダー通りの勤務ができるなど勤務条件にも魅力がたっぷりです。
6.看護師の病院以外での転職先例⑤保育園
・健康管理
保育園によっては0歳児クラスから5歳児クラスまであり、子供たちが親元を離れ1日のほとんどを過ごすので、夕方の親元に返すその時間まで体調を崩してはいないか、怪我をしてはいないかしっかりと見守る必要があります。中でも、保育園によっては行われている産休明け保育や0歳児保育などでは、体調の変化が非常に起こりやすいため特に注意が必要になります。また他にも、定期的に行われる健康診断などの際には園医の補助として活躍するなど、看護師は保育園の保健の先生として必要とされているのです。
・応急処置
大勢の子供が共同生活を送る保育園では、怪我の発生も少なくありません。怪我が発生してしまった時には、看護師が程度に合わせた応急処置を施します。例えば、消毒をすれば済む程度の怪我やバンドエイドを貼れば済む程度の怪我であれば保育園に勤務する看護師の応急処置だけで済むのですが、それ以上の怪我になった場合には医療機関へ搬送するなどの処置が必要になります。保育園勤務の看護師が行えるのは「応急処置」までです。
・病気や怪我の予防および指導
不特定多数の人間が共同で生活をしていると、怪我の発生はもちろん病気の蔓延という危険もあります。特に保育園など小さな子供が大勢で過ごす場所では、そのリスクは非常に高まります。親御さんの中には子供の体調が悪くても「少しぐらい大丈夫」と勝手な判断で病気の子供を保育園に預けてしま方もいて、その結果、周囲の子供に病気が移ってしまいます。「保育園に預けていると病気をもらってくる」というのはよくある話で、保育園勤務の看護師は、こうした集団感染を防ぐためにも、適切な指導を行う必要があるのです。大きな問題になる前に予防したり、必要に応じて保護者に指導を行うなどの措置を取る事も保育園勤務の看護師の仕事です。
7.看護師の病院以外での転職先例⑥その他(ツアーナース・豪華客船・刑務所など)
あと豪華客船の看護師として、幅い広い知識と技術、そして強い精神力以外に求められるのは、語学力です。豪華客船の旅は世界中を周ります。乗客や乗員が外国人であることも十分考えられますし、航海中に急病人が出た場合は、医療施設のある最寄りの国に寄港し、現地の病院に受診する事もあります。そのため英語力は重宝されます。
刑務所では基本的には看護師としての勤務になるため、仕事の内容も一般病院と何ら変わりのないものですが、一般病院と医療刑務所では違いは、「そこにいるのが一般の患者か囚人か」という点です。これにより患者とのコミュニケーションは大きく異なります。一般病院であれば、患者とある程度のコミュニケーションを取り、その場その場で異変や違和感を確認する事が出来ますが、相手が囚人、受刑者である場合、コミュニケーション自体が制限されることもあります。
一方で、刑務所での勤務は思っている以上に魅力的な部分が多くあります。 何と言っても福利厚生の充実した環境であるというのが第一に挙げられるでしょう。刑務所勤務は公務員としての扱いになるため不況に強いですし、育児休暇、各種手当、住宅補助など、福利厚生は充実しています。 また刑務所看護師として働いていれば専用の物件を格安で利用することが出来ることもあるようです。
特別支援学校には、その他、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのメディカルスタッフが在中している所もあり、教育と医療が同時に行われていますが、主体は「教育」であり、看護師は教師をサポートする立場にあります。そこが病院勤務とは大きく違う点ですが、教職員と連携を取り合いながら、障害のある児童・生徒のケアを行う事は、チーム医療と似ていると言えます。
特別支援学校での勤務は、責任感の重さや、教育現場での看護師の立場など難しい点もありますが、障害を持った子供を教育者、医療関係者、保護者が力を合わせて自立に導くという大きな目的があり、連帯感が生まれます。ありきたりな言い方かもしれませんが、子供たちの頑張る姿、笑顔、そして愛情をそそぐ保護者の姿から、病院勤務では得られない事を多く学び、自分自身が励まされることでしょう。
一言に「イベントナース」と言っても活躍の場は様々です。まず思いつくのは、スポーツの試合や野外コンサートやお祭りなどです。その他、夏の海水浴場や、冬のスキー場での催し等、季節に応じたイベントがあります。たくさんの人が集まり熱気があふれる場所は楽しいこと以外に「危険なこと」もあります。例えば試合中のケガ、急病、夏の屋外では熱中症の可能性もあります。それらに対する初期医療を行いイベントがより楽しく安全に行えるようサポートするのがイベントナースの仕事です。
8.病院から病院以外へ転職した3名の転職体験談
大学病院から老健に転職成功(転職時29歳・女性・東京)
大学病院の外科病棟・内科病棟での勤務経験がありましたが、結婚生活と大学病院の病棟正社員を両立させる自信がなかったため、退職を決意しました。
転職を考えたのは初めてで、病院やクリニックくらいしか思い浮かばなかったんですが、検索していたら老人施設は比較的夜勤がなさそうで働きやすいかなあと思い検討しはじめました。最終的にはマイナビ看護師のスタッフに全面的に情報収集を依頼する形で仕事探しをはじめて、ちょうど新居から通いやすいところにある老健に空きがあると教えてもらって、すぐに詳しく話を聞きました。病院勤務の経験しかない私が老健で勤務できるか不安でしたが、仕事内容は割とルーティーンが多くて大学病院で働いていた頃よりも随分体力的に楽になりました。スタッフは私1人じゃないし、今は仕事にも慣れてきました。老健での求人は病院やクリニックと違って割と希少性が高く、自分一人では見つけにくい求人情報だと思います。仕事が見つかったのは運もよかったのかなあと思います。
民間病院から治験業界に転職成功(転職時34歳・女性・東京)
大学病院で5年間の勤務を経て、結婚と同時期に民間病院に転職。夜勤をこなしながら家事もする生活をしていました。でも30歳の時に交通事故に遭い、事故の後遺症で跛行の症状がありました。その時はもう、人生真っ暗になりました。こんな体じゃ、看護師は続けられないって…。経済的にも、私が仕事を続けないと厳しい状況だったので。
でもしばらくして気持ちが前向きになって来て、足が不自由でもできる仕事があるはずだと思って、必死に探しましたね。その時出会ったのが治験業界のDM(データマネジメント)の仕事です。治験のお仕事はCRCやCRAなど、外勤が多い仕事というイメージでしたが、DMはデスクワーク中心なので、私でも出来ると思いました。治験では多くのデータ処理をコンピュータで行いますが、本当にそのデータがお薬の影響で起きたものかどうかは、目視でチェックすることになります。看護師経験を通して培ったカルテやデータの読解能力は、そのままDMに活かせると思いました。体力的にはかなり楽ですし、やりがいがあります。データからその患者さんの様子を思い浮かべられることが出来るのは、病棟経験があるからこそ出来ることだと思います。毎日充実しています。
病院勤務から休職を経て保育園に転職成功(転職時38歳・女性・神奈川)
総合病院の小児科病棟・小児科外来で合わせて6年勤務していましたが、結婚と同時に退職。その後家事・子育て中心の生活をしていましたが、子供が手を離れたので社会復帰したいと考え始めました。こんなにも長く臨床を離れてしまって、本当にやっていけるのか不安でしたが、家事・子育てだって、立派な社会経験だと思い、それも活かして出来る仕事が必ずあると信じて仕事探しをしました。
復職活動にはマイナビ看護師を使い、登録したその日に、保育園の看護師求人についてお話を聞けました。最近保育園でも看護師を配置するようになってきていると聞いたことはありましたが、近くの保育園で募集しているとは知らなかったんです。結果的に家から通いやすい場所にある保育園で、まずは週3日のパート看護師として再就職出来ました。子育ての経験があるとはいえ、感染症や予防接種の知識、発達障害の知識などはどんどん勉強しないと追いつかないですし大変な面もありますが、病院勤務時代よりも激務度も減り充実しています。
看護師が現状勤務しているのは「病院」が圧倒的に多く約70%、「クリニック」を入れれば約85%に及びます。病院は医療経験を積めて看護スキルが身につく等のメリットは多いものの、中には「二交替が辛い」「病院の人間関係が辛い」など悩みを抱える人も多いです。そんな方々で「病院以外」で活躍の場を求めるケースも多いんですが、実際に調べると病院以外の求人数はクリニックを除けばかなり少ないです。訪問看護ステーションや高齢者施設などはまだ見つけやすいですが、その他のニッチな種類の求人はかなり見つけにくいです。
そんな時に利用必須なのが、マイナビ看護師などの看護師転職エージェントです。看護師転職エージェントを用いれば最新の求人情報を手軽に知ることが出来ます。「1名募集の保育園の採用情報をゲットできた」「家の近くの特別支援学校で看護師として採用された」「添乗ナース(ツアーナース)のバイトを見つけた」など、看護師転職エージェント経由で病院以外へ転職を成功させる看護師は多いです。まだ未登録の人はまず登録して求人をチェックしましょう。