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造血細胞移植は、血液のがんである白血病やリンパ腫、再生不良性貧血の根治治療を目的とした医療です。造血細胞移植に関わる看護師は、移植前から移植直後、そして長期的なフォローアップまで移植を受ける患者に深く関わります。今回は、そんな造血細胞移植医療に関わる看護師の仕事や役割、転職のための必要な知識について紹介します。

1,造血幹細胞移植とは?

造血幹細胞移植とは、よく知られている抗がん剤や放射線では治療が難しいと言われる血液疾患(血液のがん)に用いられる治療法の1つです。血液のがんには白血病や悪性リンパ腫・再生不良性貧血・多発性骨髄腫などがあり、これらの治療法の1つになります。

そもそも造血幹細胞とは、へその緒や骨髄に多く含まれる、白血球や赤血球、血小板など血液細胞のもとになる細胞のことです。造血幹細胞を採取するには以下の3つの方法があります。

・骨髄移植:造血幹細胞をドナーの骨髄から採取

・抹消血幹細胞移植:ドナーに特別な薬剤を投与して血液中に流れ出た造血幹細胞を採取

・臍帯血移植:出産の際に臍帯血から採取

この造血幹細胞を採取するドナーには、血縁者もしくは血縁者でない人(骨髄バンクや臍帯血バンク)から選ばれます。ドナーからだけでなく、自身の造血幹細胞を用いることも可能で、その際は「自家」造血幹細胞移植と呼ばれます。一方でドナーの造血幹細胞を用いる場合は「同種」造血幹細胞移植と呼ばれています。

移植の段階として「移植前処置」と「幹細胞輸注」の二つがあります。

・移植前処置:大量・強力な抗がん剤治療や全身放射線治療を行う

・幹細胞輸注:点滴で血管内に幹細胞を投与する

造血幹細胞が体内に投与されると、血液細胞の元として骨髄に根付き(生着)、血液細胞が造られようになり、その後体内のがん細胞を撃退することを目的としています。

造血幹細胞移植のリスクとは

ほかの抗がん剤治療と比較して、造血幹細胞移植ではときに重度の副作用や合併症が起こりやすいことがデメリットとして挙げられます。そのため、適切なドナーがいるかどうか・病気の進行・患者や家族の意向などが総合的に判断され、移植を希望してもすベての患者が移植を受けられない実情があるのも特徴です。さらに移植を提供する施設でも移植ができるかどうかの判断が異なるため、セカンドオピニオンなどの相談がとくに重要な要素になるといえるでしょう。(参照URL)

2,造血幹細胞移植の看護とは

造血幹細胞移植に対する看護では、造血幹細胞移植がハイリスク・ハイリターンの治療であるがゆえに、看護師に求められる知識や技術も多いと言わざるをえません。さらに移植の後、細胞が生着するまでの間に患者さんには多くのサポートや支援が必要となり、医師・看護師・管理栄養士・理学療法士・薬剤士・臨床心理士などのチームの一員としての役割も求められています。

移植前の患者教育と指導

移植前には十分な時間を持って感染予防(口腔内・手指衛生、皮膚・会陰・肛門部のケア)を繰り返し行う必要があります。移植後の副作用や合併症・感染症が起こることに備えて、移植前の患者教育が治療においてもかなり重要な位置を示しているといえるでしょう。

移植前後の看護

移植後看護としては、①症状のマネジメント、②GVHD(生着したドナーの細胞が患者の身体を攻撃する)、③感染予防がポイントになります。症状のマネジメントでは、移植後の経過に合わせてどの時期に「生着症候群(血管の透過性が増して水が血管外に漏れることにおり起こる肺水腫などの症状)」やGVHD・感染症が起こりやすいのかを把握し、症状の観察や早期発見をすることが重要になります。さらに副作用の症状に対する患者さんの苦痛を緩和するケアや退院後に向けて合併症・感染予防を高めるセルフケア能力の獲得に対するサポートが必要となります。患者さんに直接行うケアだけでなく、感染を予防する「防護環境」と呼ばれる環境管理を徹底して行うことも大事な看護のひとつとなっています。

退院へ向けての看護

移植後は2〜4ヶ月で退院できることが多いとされているものの、退院後の週1回〜の外来通院を患者さんは続けて行かなければなりません。その際、病気の再発・移植の合併症・日常生活上の問題などがあるかも観察し、精神的・身体的サポートすることが求められています。

参照URL:「移植施設・相談窓口」造血幹細胞移植推進拠点病院(拠点病院)一般社団法人日本造血細胞移植学会

造血細胞移植医療に関わる看護へ携わるためのステップは?

造血幹細胞移植数は増えてきているものの、実際に症例数の多い場所で勤務をすることがなければ、造血幹細胞移植の看護をより深く学ぶことは難しいといえます。しかし、造血幹細胞移植に関わる看護師の質や技術の向上のため、学会などでは看護師のクリニカルラダーを作成したり、研修会を開いたりと様々な工夫がなされています。クリニカルラダーを参考に、造血幹細胞移植看護に関わるにあたり、何を習得すべきなのかが明確になり、ほか分野で働いていても、将来の転職に備えて準備すべき知識や技術がわかります。これらの資料を参考にしながら、自身の知識・経験年数によって積極的に研鑽を積んでいくと良いでしょう(参考PDF)。

 

日本における造血幹細胞移植の実績は?造血幹細胞を実施している病院は?

現在、日本ではどのくらい造血幹細胞が行われているのでしょうか。2017年度では同種移植・自家移植を合わせての移植登録件数は5,500件にのぼります。移植種類別としては自家移植がもっとも多く、次に非血縁者間の臍帯血移植、そして非血縁者間の骨髄移植が多くなっています(参照:「日本における造血幹細胞移植の実際 2018年度」一般社団法人日本造血細胞移植データセンター

また造血幹細胞移植を実施している施設は全国に多数あります。そのうち全国で9箇所の病院が「造血幹細胞移植推進拠点病院」に指定されています。(参照:「移植施設・相談窓口」造血幹細胞移植推進拠点病院(拠点病院)一般社団法人日本造血細胞移植学会)さらに日本骨髄バンクや臍帯バンクの非血縁者間造血細胞移植が行われる施設は200施設以上あり、ほかにも血縁者間や自家移植のみを行う施設もあります。

 

造血細胞移植医療に関わる看護をしたいと思ったら

「ハイリスク・ハイリターン」と称されることもある造血幹細胞移植は、治療のリスクを承知でも治療を受けたいという患者も多いです。看護師としては、その非常に強い抗ガン治療の副作用や移植後の合併症など患者さんに起こりうる状況をしっかりと観察しサポートする役割の大きさは計り知れず、それゆえ移植に関する知識や技術の習得が重要になってきます。だからこそ、造血細胞医療に関わる看護師のやりがいも大きく、患者さんを入院前から退院後まで長期的にフォローする、いわばドナーコーディネートとしての役割も求められています。キャリアアップを目指す看護師にとっては、成長できる分野といえ、挑戦する価値は大いにあるといえるでしょう。

今後もますます注目される造血細胞移植医療に携わりたいのであれば、まずは学会や研修会に積極的に参加してみることをおすすめします。専門的な知識に触れてみることが第一歩かもしれません。また実際に転職を考えるのなら、造血細胞移植拠点病院や移植実施例のある病院を探して転職するのが今の段階では現実的です。その際は、転職サイトを利用するとさらに募集がみつけやすくなります。