看護師として働く場所として、特別支援学校を考えたことはありませんか?仕事内容や給料など想像がつきますか?「特別支援学校のことは知っていたけど職場として考えたことはなかった」という看護師がほとんどではないでしょうか。しかし、看護師としての知識や経験が、特別支援学校に通う子供たちのために生かすことができれば、看護師としても病院やクリニックでは学べない貴重な経験をすることができるはずです。今回の記事では、特別支援学校で働く看護師の仕事や給料、そして求人についても解説していきます。
1.特別支援学校とは?医療的ケアが必要な児童生徒数は?
はじめに特別支援学校について確認をしておきましょう。「特別支援学校」とは、「盲学校・聾学校・養護学校」のことで、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者などに対する教育機関です。
平成29年度の資料では、全国にある国立・公立・私立の特別支援学校数および学校設置基準学級数は、1,135学校・35,719学級となっています(参考URL)。さらに、幼稚部〜高等部合わせて児童生徒数は、141,944人となり、もっとも多いのが高等部の68,702人、ついで小学部41,107人、中学部30,695人、幼稚部1,440人の在籍となっています。
では、実際に特別支援学校で医療的ケアが必要な児童生徒はどのくらいいるのかの平成28年度の調査では、全国で8,116名おり、これは全在籍者の6%にあたります(参考URL)。その医療的ケアを必要とする幼児児童生徒は、述べ25,900件の医療的ケアが必要であるとされています。そのうちとくに幼児児童生徒において、一人で複数の医療的ケアが必要なケースが多いです。医療行為別では、たんの吸引などの呼吸器ケアが68.7%、経管栄養などのケアが23.6%、導尿が2,4%との結果が出ています(看護師の仕事内容に直結します)。これらは、公立の特別支援学校の調査結果ですが、私立においても必要な医療的ケアは同様の傾向があると予測できるでしょう。
2.特別支援学校で看護師は働ける?仕事内容や役割は?
特別支援学校でも、看護師は働くことができます。昨今、医療的ケアが必要な幼児児童生徒の増加により、その需要は増えているともいえるでしょう。特別支援学校に通学する生徒は、様々な理由で一般学級に通うことができない生徒たちです。前述のように痰の吸引が必要であったり、インシュリン注射などの医療行為の支援が必要な生徒もいます。特別支援学校では、看護師には生徒の健康管理や医療ケアが必要な生徒に対しての対応が求められているのです。
実際に、公立の特別支援学校等でどのくらいの看護師が働いているのかというと、前項と同様の調査では、医療的ケアに対応するために配置されている看護師は平成28年度においては1,665名となっています。これは前年度と比べ99名増加しており、年々増加傾向がみられています。
具体的に看護師が特別支援学校で勤務する方法の一つとして、養護教諭の資格を取得することが挙げられます。養護教諭の資格を取得することで、学校の保健室で働くことができるようになり、けがや事故などが発生したときには、適切な医療行為を実施することができます。養護教諭になるには看護師の資格であれば、大学卒業後に各都道府県で実施されている教員採用試験に合格する必要があります。高卒の看護師であれば、養護学校に入学し指定された科目を受講・履修し、その後教員採用試験を受けることになります。
平成24年4月より特別支援学校等の医療的ケアに関する新制度の移行後、学校の教員も限られた条件のなかで医療的ケアを実施できるようになっているものの、やはり看護師が医療的ケアを担う場面は多いといえます。とくに以下のような仕事内容が特別支援学校の看護師に求められています。
・病気やけがの応急手当て、緊急時の受診付き添い
・学校全体の衛生管理
・感染症予防の提案と実施
・身体的障害をもつ児童への医療的ケア
・吸引(口腔・鼻腔・気管切開部から・経鼻咽頭エアウェイ)
・経管栄養
・導尿
・インスリン注射
・酸素吸入
・人工呼吸器の管理
・内服与薬や介助
医療的ケアが必要な幼児児童生徒は、医療的ケアがより必要であることが特徴ではあるものの、病院に入院している児に比べると自立して行える部分も多く、常時医療的ケアが必要な児童ばかりではありません。なので仕事内容的にも特別支援学校ならではのものになります。
さらに幼児児童生徒への医療的ケアだけでなく、他の教員との連携や支援、そして保護者の相談や支援も特別支援学校における看護師の大切な役割・仕事内容といえるでしょう。また働く場所も学校内以外にも、スクールバスの添乗、宿泊を伴う活動への参加、寄宿舎を設置している学校では寄宿舎での医療的ケアの実施も看護師の仕事内容として含まれています。
3.特別支援学校看護師の給料は?
特別支援学校で働く看護師は、特別支援学校が公的機関であることが多いことから、その場合は地方公務員として働くことが多くなります。採用後は各都道府県や市区町村の公務員給料に準ずることになります。それに加えて、特別支援学校に勤務するための特別手当の支給が給料に含まれることもあります。
実際に、看護師の給料としては病院と比べると高くはなく、年収は300万円〜350万円が相場のようです。病院看護師のように夜勤手当等がないですが、公務員同等の待遇なので勤続年数によって昇給や賞与にも反映されるため、長く働けば年収が確実に上がる安定した仕事であるともいえるでしょう。非常勤看護師も多く働いており、正看護師免許があれば、年齢や学歴等不問のところもあります。時給は1,020〜1,800円など地域差があるといえます。以下でケースごとの年収例を挙げてみます。
1. 新卒・未経験者の給料例
新卒や経験の浅い看護師が特別支援学校で働く場合、初任給は一般的な看護師の給与よりもやや低めに設定されることが多いです。これは特別支援学校の勤務が通常は日勤のみで、病院などに比べて夜勤手当や残業手当が発生しにくいためです。
- 月給:20万円~23万円
- 基本給:18万円~20万円
- 手当:2万円~3万円(通勤手当、住宅手当など)
- 残業代:基本的にほとんどなし
- 年収:300万円~350万円
- ボーナス:年間2~3ヶ月分(約40万円~60万円)
2. 経験3~5年の中堅看護師の給料例
数年の経験を積んだ看護師の場合、給与は段階的に増加します。特別支援学校で働くことで、新人指導や特定の業務を担当する責任が増えることもあり、その分給与が上昇します。また、地域によっては給与の差があるため、都市部での勤務は地方よりも高めの傾向にあります。
- 月給:25万円~28万円
- 基本給:22万円~24万円
- 手当:3万円~4万円(通勤手当、住宅手当、役職手当など)
- 年収:400万円~450万円
- ボーナス:年間3~4ヶ月分(約60万円~90万円)
3. 経験10年以上のベテラン看護師の給料例
10年以上の経験を持つベテラン看護師は、学校内でリーダーシップを発揮する役割を担うことが多く、給与にもその経験が反映されます。管理職に昇進する場合はさらに役職手当が加わり、給与は大幅に増加します。また、ボーナスの支給額も増え、年収全体に大きく影響を与えます。
- 月給:30万円~35万円
- 基本給:26万円~30万円
- 手当:4万円~5万円(通勤手当、住宅手当、役職手当など)
- 年収:500万円~600万円
- ボーナス:年間4~5ヶ月分(約100万円~150万円)
4. 非常勤・パート看護師の給料例
非常勤やパートタイムで働く看護師の場合、給与は時間給で計算され、正社員とは異なりボーナスや手当がほとんどないのが一般的です。ただし、労働時間が短く柔軟な働き方ができるため、家庭と仕事を両立しやすいのがメリットです。
- 時給:1,500円~2,000円
- 月給例:週5日×6時間勤務の場合=18万円~24万円
- 年収:250万円~300万円(ボーナスなし)
ちなみに一例ですが以下は都立特別支援学校非常勤看護師(特別職非常勤職員)の募集ページにある給料の記載です。非常勤で1年未満の契約のようですが日給で1.5-2万円程度が相場のようです。採用された場合は府中けやきの森学園、八王子東特別支援学校、墨東特別支援学校、花畑学園、あきる野学園、青峰学園など都内の特別支援学校のどこかに配属になるようです(参考URL)。
4.特別支援学校看護師の求人探しでよくあるFAQ
特別支援学校で看護師として働くにはどのような資格が必要ですか?
回答:基本的には看護師免許が必要です。加えて、保健師免許や特別支援教育に関連する資格を持っていると、採用される可能性が高まります。また、特別支援学校での看護業務は、医療行為だけでなく、生徒の支援や健康管理が重要となるため、特別支援教育や福祉に関する知識があると有利です。
特別支援学校での看護師の主な業務は何ですか?
回答:特別支援学校の看護師は、生徒の健康管理や応急処置、医療的ケアが主な業務です。また、障害を持つ生徒が通学しているため、個別のケアや介助、保護者や教師との連携も重要な役割です。看護師としての医療行為だけでなく、福祉や教育の一環として働く場面も多いです。
特別支援学校の看護師は夜勤や残業がありますか?
回答:特別支援学校での勤務は通常、日勤のみで夜勤はありません。また、学校のスケジュールに合わせた勤務となるため、残業も少ない傾向があります。夏休みや冬休みなど、学校が休みの期間は業務が減る場合もありますが、その分給与に影響があることもあるため、雇用条件を確認しておくことが大切です。
特別支援学校での看護師の給料はどのくらいですか?
回答:特別支援学校の看護師の給料は、地域や経験年数、雇用形態によって異なりますが、新卒の場合は月給20万円~23万円程度、中堅看護師で25万円~28万円程度、ベテラン看護師で30万円以上となることが多いです。正社員であればボーナスが支給されることが多く、年収400万円~600万円程度が一般的です。
求人の募集時期はいつが多いですか?
回答:特別支援学校の看護師求人は、年度初め(4月)や夏休み前後に募集が集中する傾向があります。また、急な欠員補充や、産休・育休対応のために年中募集が行われる場合もあります。特に年度末から年度始めにかけての時期には、多くの学校で人員調整が行われるため、求人が増える可能性が高いです。
特別支援学校で働くメリットは何ですか?
回答:特別支援学校で働く看護師のメリットとして、夜勤がないことや、比較的規則正しい勤務時間が挙げられます。また、障害を持つ子どもたちの支援に携わることで、やりがいを感じることができる点も魅力です。さらに、学校教育に関わることで、看護師としてのスキルだけでなく、福祉や教育に関する知識も深めることができます。
特別支援学校の看護師として働く際のデメリットは何ですか?
回答:特別支援学校で働く場合、夜勤がないため、夜勤手当がもらえない分、病院勤務に比べて給料が低くなることがあります。また、障害を持つ生徒への対応には、通常の看護業務以上に忍耐力や柔軟な対応が求められる場面も多いため、精神的な負担がかかることもあります。
非常勤やパートでも働けますか?
回答:特別支援学校では、非常勤やパートの看護師も募集されることがあります。フルタイムで働くことが難しい場合、非常勤での勤務を選ぶことで、家庭との両立がしやすくなります。時給は1,500円~2,000円程度が一般的で、勤務時間や日数に応じた給与体系が設定されています。
採用試験や面接でどのようなことが重視されますか?
回答:採用試験や面接では、看護師としての基本的なスキルに加えて、特別支援教育に対する理解や興味が問われることが多いです。また、生徒や保護者、他の教職員とのコミュニケーション能力も重視されます。特別支援学校では、医療的な対応だけでなく、生徒の心理的ケアや教育的支援にも関与するため、柔軟な対応力が求められます。
特別支援学校の看護師として働くために必要なスキルは何ですか?
回答:特別支援学校で働く看護師には、基本的な看護スキルに加えて、障害を持つ生徒のケアに関する専門的な知識やスキルが求められます。医療的ケア(吸引や経管栄養など)の知識が必要な場合もあります。また、コミュニケーション能力や、個々の生徒に合わせた柔軟な対応力も重要です。
特別支援学校での看護師の仕事と病院勤務との違いは何ですか?
回答:特別支援学校での看護師の仕事は、基本的に日中のみの勤務であり、夜勤や急な呼び出しが少ないのが特徴です。また、病院勤務に異なります。医療現場と比べると、コミュニケーションや福祉的な役割が増える傾向があります。
特別支援学校で働く看護師の勤務時間はどのくらいですか?
比べて、医療行為よりも生徒の健康管理やケア、教育的なサポートが重視される点が異なります。医療現場と比べると、コミュニケーションや福祉的な役割が増える傾向があります。
特別支援学校で働く看護師の勤務時間はどのくらいですか?
回答:特別支援学校の看護師は、学校の開校時間に合わせて働くことが一般的です。通常は朝8時~夕方5時前後の勤務が主で、夜勤はありません。また、休日も学校の休校日に準じているため、夏休みや冬休みには勤務が少なくなることが多いです。
特別支援学校において医療的ケアが必要な幼児・児童や生徒数は増えており、そこで働く看護師の需要も高まることは予測できます。しかし、実際には求人数が限られる・募集時期も各々違い、さらに非常勤の看護師の募集が多いという傾向がありそうです。特別支援学校は看護師が必要とされ、かつやりがいの高い職場の一つであることは確かなため、特別支援学校で働きたい看護師は、地道に就職活動を続けていくことが必要とされます。仕事内容や給料についてもこのページで理解を深めておきましょう。