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看護師の仕事を始めたものの、理想と現実のギャップを感じている看護師も多いのではないでしょうか。過酷な職場環境や、人間関係に疲れて「もう辞めたい」と考えてしまう看護師の方々も少なくないでしょう。

看護師の退職理由ランキングは下記の参照記事でも紹介していますが、ここでは、「離職率」に特化して過去の看護師の離職率の平均データや推移、職場やエリアや経験年数ごとの離職率などをリサーチしていきましょう。もし今の職場を辞めたいと思っている方は、今の職場に留まるべきか、また転職するならどのような職場がいいのかの参考にもなりますのでぜひお役立てください。

1.看護師(看護職員)の就業者数は増えているが不足傾向

まずは看護師の離職率の過去の平均や推移を見る前に、看護師の就業者数を把握しておきましょう。厚生省が発行した「第一回看護職員需給見通しに関する検討会」資料によると、2012年度(平成24年)の看護職員就業数は以下の通りです。「看護職員」という表現で、准看護師や保健師、助産師も合算した数字ですが、厚労省や看護協会の離職率データの母数が看護師ではなく看護職員であるケースが多いためここでは「看護職員」という表現でご紹介しています。

看護師1,067,760人
准看護師377,756人
保健師57,112人
助産師35,185人
看護師職員合計数1,537,813人

2012年度の看護職員による就業数は約154万人ですが、同資料によると、同年の新規資格取得者は約5.1万人、ハローワークなどを使用し再就職した人数は約14万人でした。その一方で同年に離職した人数は約16.1万人で、その結果、過去10年間で平均の数字を見ると全体の就業看護職員増加数は毎年約3万人となっています。

この数字を見ると看護師の就業数は増えているように感じるかもしれません。しかし高齢化が進んでいる日本では2025年時点で3人に1人が65歳以上という超高齢社会になると予想されており、そのときには196~206万人の看護師が必要といわれています。こう考えると看護師不足は顕著で、現役の看護師の仕事量がさらに増えることが見込まれます。それで、看護師の離職原因の追究と予防、対策、改善が早急に必要になっています。

2.看護師の離職率の現状とは?過去の平均や推移は?

本題である看護職員の離職率の推移の話に進みます。日本看護協会は「2016年 病院看護実態調査」を実施し、2016年度の常勤看護職員離職率は平均で10.9%であったと報告しています。これは2010年度の11.0%からあまり変化がありません。また2016年度の新卒看護職員離職率は7.6%で、2011年度から7%台後半を維持しています。このように現時点で看護師の離職率は著しい増減はなく、横ばい状態であることがわかります。

計算方法については、正規雇用の看護職員離職率は、「定年退職を含む総退職者数/平均職員数」で計算されていて、新卒の看護職員離職率は「新卒退職者数/新卒採用者数」で計算されています。看護協会や厚生労働省から2019年を含む最新データはまだ更新されていませんが、過去の推移を見る限りだと2019年以降も平均的に横ばいでの推移の傾向が続くのではないかと推測されます。

3.職場別:看護師の離職状況

次に職場別の離職状況を確認しましょう。2015年度と2016年度の職場別看護職員の離職状況を以下の表から確認することができます。

2016年度(2017年調査)2015年(2016年調査)
医療機関正規雇用看護職員新卒看護職員正規雇用看護職員新卒看護職員
全体10.9%7.6%10.9%7.8%
国立9.9%5.9%10.3%6.7%
公立7.9%7.4%8.1%7.7%
日本赤十字社8.4%6.7%8.4%6.1%
済生会10.4%9.1%11.2%6.1%
社会福祉法人12.6%9.5%11.7%6.1%
個人14.2%10.0%17.3%17.6%
厚生農業協同組合連合会8.6%5.0%8.3%5.1%
北海道社会事業協会13.8%0.0%13.4%1.7%
社会保険関連団体11.6%11.0%12.4%9.2%
公益社団法人・公益財団法人11.6%10.0%12.3%8.1%
私立学校法人12.0%6.6%12.1%7.1%
医療法人(社会医療法人を含む)13.6%9.2%13.3%9.3%
医療生協11.5%10.8%10.5%6.3%
その他の法人(一般社団、一般財団、宗教法人等)12.2%7.0%12.5%10・7%
会社9.6%7.8%10.4%9.4%
無回答・不明11.6%10.2%13.8%20.0%

(参照:日本看護協会「2017年病院看護実態調査」結果報告

この表は個々の就業者数が違うので単純にパーセンテージを比較してもしょうがないのですが、1つの傾向としてご紹介すると、離職率が特に高いのは個人病院・クリニックである傾向は伺えます。個人病院の職場の離職率が高い理由として、全員に当てはまることではないですが、平均的な離職理由として以下のようなものが推測されます。

1、福利厚生が充実していない
国立や公立などの医療機関に比べると、クリニックや診療所の福利厚生はあまり整っていないことが多いです。そのため長い目で見たときに将来への不安を覚え離職に至ることがあります。

2、勤務時間が長い
サービス残業が多く、休憩時間を確保することが難しい場合があります。その結果、疲れが蓄積し離職を考えるようになるかもしれません。

3、人間関係が緊張しやすい
国公立病院などに比べ医療職員の人数が少ないため、人間関係のトラブルがおきやすく、長引く傾向があるようです。

4、看護職員人数が少なく仕事量が多い
看護師の人数が少ないため、一人当たりの仕事量が増えるだけでなく、負担も大きくなっています。

5、教育制度がない
多くのクリニックや介護老人保健施設などではあまり新人教育やスキルアップの機会がありません。そのため離職を考える看護師がいるようです。また今まで医療現場で勤務していた看護師が介護福祉士が多い職場で勤務することになり、医療に対する見方のギャップを感じることがあります。

 

こちらの参照記事にも個人クリニックなどへ就職するデメリットの紹介があります。

4.エリア別:看護師の離職率

さらにエリア別での看護師の離職率をみてみましょう。同調査より、2016年度の都道府県別の看護師の離職率を調べたデータがあります。正規雇用の看護職員全体の数字と、新卒看護職員のみの離職率を都道府県別に見てみます。離職率が高いエリアのベスト4を以下の表にまとめてみました。

順位正規雇用看護職員の離職率(%)新卒看護職員の離職率(%)
第一位神奈川県(14.7%)栃木県(11.3%)
第二位東京都(13.8%)山口県(11.2%)
第三位大阪府(13.4%)徳島県・愛媛県(10.9%)
第四位兵庫県(13.1%)長崎県(10.5%)

この表から、正規雇用看護職員と新卒看護職員の離職率が多いエリアが全く異なっているのがわかります。正規看護職員の場合、離職率が高いエリアは神奈川、東京、大阪、兵庫といった大都市部に集中しているのに対し、新卒看護職員のみに焦点をあてると離職率が高いのは大都市ではなく、地方(栃木、山口、徳島、愛媛、長崎)であることがわかります。

正規雇用の看護職員全体の離職率で都市部の数字が高いのは、たとえ離職後に再就職をするとしても、大都市では転職先の選択肢が多いこと、またキャリアアップの機会も多いことなどが挙げられるでしょう。

では看護師の離職率が低いエリアベスト4もご紹介しましょう。

順位正規雇用看護職員の離職率(%)新卒看護職員の離職率(%)
第一位福井県(5.6%)鳥取県(2.5%)
第二位秋田県(6.4%)福井県(2.8%)
第三位徳島県(7.1%)島根県(3.5%)
第四位青森県(7.4%)静岡県(3.8%)

正規雇用、新卒看護職員ともに、比較的地方エリアの離職率が低いことがわかります。とても興味深いのは、正規雇用看護職員・新規看護職員ともに離職率が低いエリア第一位、第二位に福井県があります。福井県の離職率が低い理由は明確にはわかりませんが、厚生労働省の「都道府県における看護職員のための研修事業事例集」によると、福井県は看護の質の向上のために、認定看護師を中小規模の病院に派遣して無料で研修を行うという事業を平成26年から展開しています。集合研修を行いにくい中小規模の病院のスキルアップにつながり、結果的に看護師の離職率の低下という相乗効果を生み出しているのかもしれません。

5.経験年数別:看護師の離職率の違い

冒頭で、新卒看護職員の方が常勤看護職員全体よりも約3%ほど離職率が低いというデータは紹介しましたが、では新卒3年目以降の看護師の経験年数別の離職率はどうなのでしょうか?2012年、日本看護協会調査研究報告によると、看護師の通算経験が3年・5年・7年の看護職員の職員数・退職数全てにあてはまる2,345病院を対象に調査したところ以下のような結果になっています。

看護師通算経験年数常勤看護職員数年度末までに退職した常勤看護職員数離職率(%)
三年26,427人3,394人12.8
五年18,450人2,324人12.6
七年16,151人1,708人10.6

経験3年の看護師の離職率が最も高く12.8%、そこから5年、7年と経験年数を経るにつれて徐々に離職率が下がっていきます。これら看護経験豊富な看護師たちの離職要因はさまざまですが、東洋大学の「「中堅看護師はなぜ離職するのか―最近5年間の統合的レビュー―」によると以下の点が挙げられそうです。(中堅看護師が経験何年目を指すかは論文によってさまざまであるため明確な定義づけはできませんが、「3年以上の経験を持ち、管理職に就いていない看護師」というのが一つの目安になりそうです)

1、多忙な業務と重い責任
看護師の経験が増えると、看護師業務や業務量が新人看護師のころに比べてどんどん増えてきます。そのなかには看護業務以外の雑務も多く、なぜ有資格者がこの仕事まで行うのかと不満に感じることさえあるかもしれません。

またそれだけではなく新人指導や委員会など、求められる責任もたくさんあります。時間外労働、勤務時間が長くなることもしばしばあり、休憩時間が全く取れないという状況もたびたび生じます。

2、ライフイベント
結婚、妊娠、出産、子育てもしくは親の介護など家族や自身の家庭の状況の変化により離職を考える場合も多いです。私生活と仕事のバランスの平衡をとることはつくづく難しいと感じます。

3、自信喪失・疲弊感
現場で求められる能力と自分の能力のギャップや、仕事上のミスが重なると、自分には今の仕事が向いていないと落ち込み、自信をなくすことがあります。この状況が長く続くと離職が頭をよぎることも少なくありません。

さらに常に緊張感を持って仕事をしてるためストレスを感じやすく、体調不良を起こすこともあります。特に目には見えない心のストレスや疲労から離職を決意することもあるでしょう。

4、人間関係
離職を考える別の要因として人間関係があげられます。何でも話せる同期の退職などがきっかけで、相談できる相手がいなくなったり、職場でいじめにあったりすることもあります。

5、キャリアアップ
キャリアデベロップメントがなかったり、思っていた以上にやりがいを感じることができないため離職を考えることがあります。看護師としてキャリアアップしたいという理想と現実の差が大きく、現状に不満を感じるという具体的な理由もあります。

(参考:東洋大学「中堅看護師はなぜ離職するのか―最近5年間の統合的レビュー―」

 

一方、同じように離職の要因に面しても離職を思いとどまった看護師たちもいます。離職を思いとどまらせた要因には以下のものがあることが同調査よりわかっています。

・看護への思いの再発見が出てたり、新たなやりがい、喜びや満足感がもてるようになった。
・違った角度で物事を見ることができるようになり、私生活と仕事との平衡を保てるようになった。
・看護業務を分担したり、勤務条件や給与アップなど目に見えてよい変化がみられたので離職を思いとどまった。
・夜勤量を減らしたり、チームワークの強化により周りの理解や支えが得られることで個人にかかる負担が軽減した。
・病院からスキルアップへの支援や育成が開始するなどの改善が見られ離職する必要がなくなり、今の職場にとどまりながらスキルアップが望めるようになった。
・一度は離職を考えたものの、今の職場の立場を失うことや新たな環境に馴染めるか不安になり思いとどまった。

 

以上の点を考慮すると、自分の見方を調整したり、新たな目標ができたことがきっかけで離職をせずに乗り越えられることが分かります。離職することばかり考えるのではなく、今ある状況でどうすれば気持ちよく働けるか自己分析することができるでしょう。さらに労働条件や業務体制の改善、スキルアップへの支援があるなどの状況の変化により離職せずに看護師を続けられる事も分かりました。職場の状況改善に向けて病院に働きかけることもひとつの方法といえますね。経験年数を経るごとに離職率が下がるのは、給料アップなど条件の改善が影響しているのかもしれません。

中堅看護師は、看護師の経験が増えてくると環境にも適応し、順調に看護師としてキャリアを積める時期です。また、同時にストレスや責任が多くなり今までとは違った立場で働くことへの重圧を感じる時期でもあります。この時期をうまく乗り切ることでさらに看護師の幅を広げることができるでしょう。

看護師の離職率の分析結果は?

看護師の離職率の平均や推移を把握し、職場別、エリア別、看護師経験年数別に分けて徹底調査してみました。全体的に看護師の離職率は横ばい状態で大きな変化はありませんが、職場別に見て、大規模病院よりも小規模病院の方が離職率が高いことや、正規雇用看護師全体でみると、大都市部での離職率が高い傾向にあることがわかりました。看護師経験年数が3年目の看護師の離職率が一番高いことも理解できたと思います。さらに経験3年以上の中堅看護師の離職要因についても把握することができました。一言で看護師の離職率といってもこんなにたくさんの理由があることに驚かれたかもしれませんね。離職率と離職理由を理解することで、看護師という仕事への取り組み方や、転職活動の仕方も変わるかもしれません。