目次
1.看護師がオープニングスタッフとして転職するメリットは?
クリニックや介護施設の看護師求人で見かける「オープニングスタッフ募集」の文字。「既存の施設へ転職するより働きやすいのでは?」と考える看護師も多く、確かにオープニングスタッフは、既存の施設にはない魅力があります。とはいえ、新規オープンの施設だからこそのデメリットも見逃せません。「新しい施設で新しいことにチャレンジできる!」といった良いイメージだけにとらわれず、デメリットにも目を向けて、自身に適性があるか否かを見極めましょう。
<※看護師がオープニングスタッフとして転職するメリット>
○スタッフの経験年数に差がないので、上下関係の煩わしさがない
○同じ目標に向かっているため、チームワークが良くなる
○クリニックのルールを自分たちで作っていける
○きれいな施設で働ける
○好条件の求人が見つかりやすい
○雇用条件を交渉しやすい
他のメリットとしては「好条件の求人が見つかりやすい」というのはあると思います。規模の小さなクリニックにとって看護師は要となる職種ですから、院長先生も「良い看護師を雇用したい」と望んでいます。そのためオープニングスタッフ募集では好条件の求人を見つけやすくなっています。
また、既存のクリニックでは規定の雇用条件があって交渉は難しいものですが、新規オープンのクリニックであれば、勤務時間や給与、福利厚生や待遇など、条件面も交渉の余地があります。これは院長側も採用活動が初めてというのもありますし、上記で説明した通りなるべく優秀な看護師さんを採用したいというのも背景にあります。
2.看護師がオープニングスタッフとして転職するデメリットは?
<※看護師がオープニングスタッフとして転職するデメリット>
○リーダーシップをとるスタッフがいないと意見がまとまらない
○良くも悪くもオープニングスタッフがクリニックのイメージを作るため責任が重い
○クリニックの経営がすぐに軌道に乗るとは限らない
○オープンまでの細かい準備が大変
まず、厚生労働省の医療施設調査をみると、一般病院は年々減少していますが、一般診療所(無床・有床を含むクリニック)は年々増加しているという事実があります。一般病院と一般診療所の数を1995年と2016年で比べると「一般病院1995年8,519件→2016年8,442件、一般診療所1995年87,069件→2016年101,529件」となっていて、一般診療所は増え続けているのです(参照:医療施設調査(1)・医療施設調査(2)※厚生労働省)。そして実は、一般診療所の増加の内訳を見ると、有床診療所は、1995年21,764件→2016年7,629件と14,135件も減っていて、無床診療所は1995年65,305件→2016年93,900件と28,595件増えているというのも見逃せません。この数字を見ると単純に20年ちょっとで一般診療所の数が14,460件増えた(または無床診療所が28,595件増えた)という印象を持ちますが、実は新規オープンするクリニックだけでなく、休診や閉院してしまうクリニックもありますから、14,460件や28,595件という数字は新規開設・再開した数から、廃止・休止した数を差し引いた数です。実際の開設・廃止数を知ると、もっと驚くと思いますよ。以下が一般診療所全体の開設・廃止数です。分かりやすくするため、再開、休止の数は割愛しています。(※施設の種類別にみた動態状況の年次推移)
開設 | 廃止 | |
2007年 | 5,083件 | 3,718件 |
2010年 | 4,632件 | 4,086件 |
2013年 | 5,435件 | 4,702件 |
2014年 | 7,216件 | 6,730件 |
2015年 | 7,353件 | 6,470件 |
2016年 | 7,206件 | 6,361件 |
新規開設が増えている要因としては「医師数の増加」「一般病院の減少」から開業する医師が増えていると考えられ、一方で廃止の要因としては「院長先生の高齢化」などがあると思います。数字としては明らかにされていませんが、経営難やスタッフ確保の問題からの休止・廃止もあると思われます。特に東京都など都市部では開設・廃止ともに高い水準にあり、入れ替わりが激しくなっています。このような状況のなかで患者さんに選んでもらい、生き残っていくのは大変難しいというのはイメージが湧くと思います。ですから、オープニングスタッフとして転職する最大のデメリットは「クリニックが将来的にどうなるか予測がつかない」ということでしょう。既存のクリニックならば、周囲の評判や平均来院患者数などから経営が安定しているクリニックか否かはある程度判断できますが、これからオープンするクリニックでは、スタートしてみないことには分かりませんからね。あとは「オープンまでの細かい準備が大変」というのは言うまでもありませんね。
3.看護師がオープニングスタッフとして働く場合の開業前後の給料や仕事内容は?
Aクリニック(地方) 基本給23~30万円 (研修期間:時給1000~1500円)
Bクリニック(関東) 基本給18.5~25万円 (研修期間:時給1000円)
Cクリニック(中部) 基本給35~38万円 (研修期間:基本給マイナス3万円)
Dクリニック(関東) 基本給34万円 (試用期間:時給1800円)
<※オープン前の看護師の仕事内容>
○薬剤や材料、備品、消耗品の選定
○マニュアル作り
○医療機器、電子カルテ、レセコンなどのレクチャーを受ける
○模擬診療
○接遇研修
○内覧会
医療機器や電子カルテ、レセコンの使用方法は各メーカーさんが来て教えてくださいます。医療機器についてはスタッフ同士で練習することもあります。電子カルテ・レセコンでは模擬患者さんを使って実際にコンピュータを動かします。
講師を呼んで接遇研修を実施するクリニックも増えています。何度もお話ししたように、クリニックの印象を決めるのはスタッフです。接遇研修では、正しい敬語の使い方、ご案内の動作、電話の受け答え、お辞儀の角度や時間、手の位置や体の向きなど、患者さんに良い印象を与える話し方や所作を学ぶことができます。以後、オープンに向けて模擬診療を繰り返していきます。オープンが近くなればチラシなどで広告をするので、お問い合わせの電話がかかってくることもあります。オープン前だからと気を抜かずに対応しましょう。
上記で説明したように、オープニングスタッフは大変な部分もあります。 しかし、その分、やりがいや達成感も大きく感じることが出来るものでもあります。 新しい職場は何もかもが新しいもので、すでに出来上がっている病院よりも創意工夫を重ねて、より業務がやりやすいように臨機応変に対応していくことが可能です。オープニングスタッフとして働く場合、 ある程度のマニュアルなどは存在するにしても、すでに出来上がっている職場の雰囲気はなく、全てを一から作り上げていくことに変わりはありません。 そのため、看護師同士の決まりごとや業務においての連携の仕方などをそれぞれがやりやすいように改善していく余地が多い職場です。 職場の小さなことから大きなことまでをそれぞれの職員が意見を出し合い、作り上げていく、それこそが最もやりがいを感じる瞬間になるでしょう。自分たちで職場を作ると言う意識は、そのまま職務に関する意欲へと発展し、より真摯に業務へ取り組むことが出来るようになります。 やりがいを求めているのであればオープニングスタッフへの転職は最も大きなやりがいを感じることが出来る転職先の1つではないでしょうか。
4.「地道に作り上げる」ことが苦にならない方はオープニングスタッフ向き?
オープニングスタッフとして看護師に求められる大きな仕事の一つは、クリニック自体の雰囲気の向上なんだと思います。新設のクリニックは、医師を含めた職員との連携も上手に行う事が難しいの実情だと思いますし、そんな中で私のようなベテラン看護師がそれぞれ橋渡しとして動くことで、医師と看護師などの連携を円滑に行う事が出来るようになるように思います。 また、営業を開始した病院には多くの外来患者が訪れることになりますが、それら患者の接客・誘導なども円滑に行うサービス業の一面も強い印象を受けました。今回レクチャー頂いたことを活かして転職活動を進めていきたいと思います!
5【本当に大変?】オープニングスタッフとして働いた看護師の体験談
1. Aさん(30代女性、総合病院勤務)
体験談:「立ち上げからチームを作り上げた経験」
「私は総合病院のオープニングスタッフとして採用され、新しい病院で働き始めました。最初は本当に手探り状態で、施設の設立準備から参加することになり、通常の看護業務に加えて、医療機器の設置やマニュアル作成など、多岐にわたる業務に追われました。
特に大変だったのは、すべてがゼロからのスタートだったため、チーム全体で意思疎通を取りながら業務を進めていかなければならなかったことです。時間管理や仕事の優先順位付けが重要で、何度も壁にぶつかりました。それでも、スタッフ全員が協力的で、リーダーシップを発揮しながらチームを作り上げる過程はとても充実していました。
今振り返ると、オープニングスタッフとしての経験は非常にやりがいがあり、看護師としてのスキルアップにもつながったと思います。新しい環境で最初から関わるという責任感は大きかったですが、学びの多い時間でした。」
2. Bさん(40代男性、クリニック勤務)
体験談:「新しいクリニックでの柔軟な対応力が求められた」
「新しく開院するクリニックでオープニングスタッフとして働く機会がありました。規模は小さいものの、クリニック独自の診療方針やシステムに早く慣れなければならず、初めは慌ただしく感じました。医療機器の使い方を学ぶだけでなく、クリニックの運営全体を見渡しながら働く必要があったので、柔軟に対応する力が求められました。
特に大変だったのは、患者さんの流れをスムーズにするために、受付から診察、治療までのフローを効率化することです。スタッフ同士で話し合いながら改善策を試行錯誤し、1ヶ月ほどで安定した運営体制を整えることができました。
新しい施設で働くことは負担も多いですが、スタッフ同士の絆が強くなり、一緒に何かを成し遂げる達成感を得られたのは大きな収穫でした。また、クリニックという限られたスペースでの効率的な働き方を学べたのも良い経験でした。」
3. Cさん(50代女性、訪問看護ステーション勤務)
体験談:「訪問看護ステーションの立ち上げに関わって」
「長年病院で看護師として働いていましたが、訪問看護ステーションのオープニングスタッフとして新しい挑戦をすることにしました。訪問看護は初めてだったため、病院での業務とは違う面に最初は戸惑いました。特に、患者さんの自宅に訪問するため、自分一人で対応しなければならない場面が多く、現場での判断力が求められました。
ステーションの開設初期は、訪問スケジュールの調整やスタッフ間の情報共有、地域医療との連携など、多くのことに気を配らなければなりませんでした。スタッフが少数であるため、一人一人の役割が大きく、医療と運営の両方を意識しながらの仕事は大変でした。しかし、訪問先で患者さんとじっくり向き合える時間が増えたことは、病院勤務では感じられない充実感を得るきっかけになりました。
今では、新しい訪問看護ステーションを軌道に乗せることができたことに誇りを感じています。最初の数ヶ月は困難も多かったですが、患者さんに寄り添いながら働くことができるこの環境は、非常にやりがいを感じています。」
4. Dさん(30代男性、地域密着型クリニック勤務)
体験談:「地域に根ざしたクリニックのオープニングに参加」
「私は、地域密着型クリニックのオープニングスタッフとして参加しました。新しいクリニックの立ち上げということで、看護業務以外にも開業準備に多く携わることになりました。特に、患者さんへの周知や地域とのつながりを築くためのイベント企画、医療機器の準備など、幅広い業務を担当しました。
大変だったのは、どのスタッフも初めてのことが多く、全員で協力して進める必要があった点です。ですが、地域の患者さんから信頼を得るために、スタッフ一丸となって努力し、開業後は順調に運営が進むようになりました。自分が立ち上げに関わったクリニックが地域に定着していく様子を見るのは、本当に嬉しいですし、大きなやりがいを感じています。」
5. Eさん(40代女性、リハビリテーション病院勤務)
体験談:「リハビリテーション病院でのオープニングスタッフ経験」
「リハビリテーション病院のオープニングスタッフとして働き始めました。リハビリ施設の看護業務は、通常の病院とは異なり、患者さんの長期的なケアやサポートが中心です。新しい施設での立ち上げということで、リハビリ機器の選定や配置、患者さんの動線設計など、細かい部分まで気を配る必要がありました。
オープニングスタッフとして働く上で、特に難しかったのは、リハビリ施設の独自のルールや運営方法を一から作り上げることでした。しかし、チーム全員が同じ目標に向かって協力し、患者さんにとって最適な環境を提供するために尽力した結果、スムーズに開業することができました。患者さんの回復を支援できる環境を自分たちで作り上げたことに、大きな達成感を感じています。」
6. Fさん(50代女性、訪問看護ステーション勤務)
体験談:「高齢者向けの訪問看護ステーションを立ち上げ」
「訪問看護ステーションのオープニングスタッフとして、高齢者向けの在宅ケアを中心にした看護サービスを提供する仕事に携わりました。訪問看護は、病院とは異なり、患者さんの自宅でケアを行うため、現場での判断が求められますが、スタッフ同士の連携が特に重要です。
立ち上げ時には、訪問ルートの調整や各患者さんのケアプラン作成に多くの時間を費やしましたが、スケジュール管理やコミュニケーションを円滑にするためのシステムを導入するなど、現場の改善に努めました。立ち上げ直後は忙しかったですが、患者さんの自宅でじっくりケアを行い、信頼関係を築くことができる訪問看護の魅力を実感しています。今では、チームとしての一体感も強まり、働きがいを感じています。」
オープニングスタッフは先に述べたように、一から自分たちで作り上げていく達成感を得られて、また雇用条件の面での比較的高待遇の求人が多いため、看護師の中でも人気の高い求人案件です。 オープニングスタッフの求人は公開されると応募が殺到するケースも多いので、「綿密な情報収集」が必要です。
そこで利用必須なのがマイナビ看護師などの大手の看護師転職エージェントです。看護師転職エージェントは数多く存在しますが、その中でも扱っている求人数が充実したサイトにはオープニングスタッフの案件が常に存在しています。 また、キャリアコンサルタントに相談することで非公開のオープニングスタッフ求人の紹介を受けられます。転職エージェント未登録の方はまずは初回登録から進みましょう。