目次
1.そもそも「ツアーナース」とは?
看護師として働いているならば、「ツアーナース」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。そして、なぜかこのツアーナースについて「旅行しながらお金がもらえる楽しい看護師の仕事」「子供たちとのふれあいで癒やされる仕事」というイメージ先行の意見を多く聞きます。しかし実際に病院などで常勤として働いている看護師がツアーナースの仕事を探すと、アルバイトでも正社員でも意外と採用条件が厳しいため、「ツアーナースをやってみたいけれど採用されるのが難しい」という方が多いのもまた事実です。そこで今回は、ツアーナースの役割や仕事内容について詳しく知らないという看護師が多いということを踏まえて、ツアーナースの仕事内容や求人など「ツアーナースの真実」について紹介していきます。
2.ツアーナースの真実その①一緒に観光地を巡れるとは限らない
ツアーナースの食事や宿泊費、交通費については依頼先の負担となりますので、「観光地巡りのお金も含めて旅行にかかる費用すべてを負担してもらえる」と思われがちですが、実際にツアーナースを経験した方によると、テーマパークや動物園など入場料がかかる場所においてはバスやホテル待機となることもあるようです。大型レジャー施設へ自分以外の引率者は全員入場する中、ナースは1人で3時間にわたってバスで待機していたという方もいました。「ツアーナースは、無料&仕事として、全国各地の観光地を巡れるお仕事」と考えている方にとって、この部分は大きなギャップとなりうるため、ぜひ事前に知っておいていただきたいポイントです。なお、待機中はその場を離れることが原則としてできません。長時間にわたり、決められた場所での待機ということも珍しくないため、本を読むなど待機中に行うことを事前に用意しておくことをオススメします。今はスマホで大丈夫とは思いますが。
3.ツアーナースの真実その②夜の業務が意外に多くあまり寝れないことも
やはり課外学習は、子供たちにとって一大イベントです。そのため、日中に多少の体調不良があっても無理して参加し続けて夜になって発熱や腹痛といった症状になって現れることがよくみられます。よって、夜間はゆっくり休める時間帯ではなく、むしろ忙しい時間帯となることが多いと覚悟しておく必要があります。実際に、夜間次々と高熱を出す生徒が来室し、気がつけば保健室兼自分の宿泊部屋が満員状態となってしまったため、寝るどころか横になることすらできずに一晩を明かしたという経験をしたツアーナースもいるほどです。ツアーナースは大抵1名体制なので、夜間に体調不良の生徒・児童が出た場合は、その子の看病をしながら、他の児童・生徒に感染が拡大しないよう予防対策も同時に行わなくてはいけないため体力勝負の仕事とも言えます。
また、体調不良の生徒・児童への対応をする際、看護師側の体力以外に注意しなくてはいけないのが「市販薬は基本的に使わない」という点です。添乗時は、学校または派遣会社から事前に一通りの市販薬の入った救急セットは用意されているものの、基本的に投薬は子供が持参した薬、もしくは旅行先で医師より処方された薬のみの管理および服用となり、市販薬を使うケースはあまりありません。そのため、夜間に突然腹痛や発熱などの症状がでた場合でも、市販薬の投薬によって一時的に症状を押さえるということができないため、夜間救急へ行くべきか、それともこのまま朝まで様子を見ていいか、ツアーナースは的確に決断することが求められます。このように、ツアーナースは夜は体調不良の子供のケアに追われる状態となるほか、薬が使えないという状況の中で的確な判断をしなくてはいけないという、とてもハードな仕事といえるのです。
4.ツアーナースの真実その③仕事は児童や生徒たちへの対応だけではない
でも実はツアーナースが対応しなくてはいけないのは、生徒・児童だけとは限らないんです。朝早くから夜遅くまで子供たちの添乗および指導を行っている「先生方」もまた、ツアーナースとして対応する必要があります。求人サイトにはそういう記載はないですよね。先生方への対応というのは、子供たちのように健康管理や体調不良時の初期治療だけではなく、事前の打ち合わせにはなかった夜間のミーティングを兼ねた食事会への参加を打診されることや、先生と一緒にレクへの参加を申し込まれるなど、夜間や移動中に突然受けるお誘いへの対応も含まれます。特に夜間のミーティングについては、参加することでより先生方とのコミュニケーションを深めることができますが、一方でほぼ初対面の先生方と食事をしながら比較的長い時間を過ごすことになるため、体力面なども考慮し、無理のない範囲での対応が必要です。このように、子供たちへの対応だけではなく添乗する他の大人への対応もまたツアーナースには求められるのです。
5.ツアーナースの真実その④意外と多い「持病・アレルギー」へのフォロー
具体的には、食物アレルギーのある子の場合、いつもと違う環境であるが故に、配食ミスによってアレルギーのあるものを食べてしまうというケースが考えられます。そこでどの子がどんな食物アレルギーがあるのか、事前に名前とともに顔写真もチェックし把握します。そして当日の食事の時には、アレルギーの子の席を事前に把握しておき、まず最初にその子へ配膳がされているかどうかを確認するようにします。アレルギー除去が必要な子については、先生方も細心の注意を払っていますが、当日は他にも多くの児童・生徒がいるため、ツアーナースが率先してアレルギー対策を行うことが求められます。
また、持病についても、どの子がどんな持病があるのかだけではなく、症状の程度や内服薬の有無、常備薬の有無やセルフケア能力の程度など、事前に把握すべき情報はたくさんあります。時々「ぜんそくがあるけれど、今はほぼ出ていない」というものもあるのですが、環境が変わるからこそひさしぶりに発症するというケースも珍しくありません。そのため、持病がある人は必ず事前に準備しておくよう、指導しておくことも大切です。
ツアーナースにはアレルギーや持病のある子も、安全に体調不良を起こすことなく全行程を過ごせるようにサポートすることが求められるのですが、そこで重要となるのが「事前の打ち合わせ」です。課外旅行の前に、添乗する職員が全員集まり行程の確認を行いますが、この時に学校の養護担当の先生も同席していることがほとんどなので、この時にアレルギーや持病のある子について、直接養護の先生から情報を得ておくとよいでしょう。この時にぜひオススメしたいのが、その生徒の名前だけでなく、顔も確認しておくということです。写真などで直接、名前と顔、持っている病気またはアレルギーを事前に看護師が把握しておくことで、その後の仕事がスムーズとなります。
6.ツアーナースの真実その⑤求められるのは「臨機応変な対応力」
林間学校やスキー教室といった学校の課外授業は、家族でのレジャーとは違い、あくまで「授業の一貫」です。対象者が体調不良となった時、看護師という立場ならば「体調を回復させる方法」を第一に考えます。しかし、課外授業においては、すべて「教育」という観点から考えなくてはいけないため、子供が安全に過ごすということが第一の条件にはなるものの、無理のない範囲でなるべく参加させることが求められます。そこで必要となるのがツアーナースの臨機応変な対応力なのです。
例えば、夜にキャンプファイヤーの行程がある中、一人の児童が当日の朝、突然発熱してしまったとします。すぐに近隣の医療機関を受診し、感冒だろうとのことで感冒薬が処方されました。処方された薬を内服してもらい、午前中のイベントは休ませ保健室で安静にしていたところ、その児童は午後にはだいぶ回復してきました。このとき、看護師としてだけを考えるのならば、「このまま翌日までは様子を見る」と考える方が多いかと思います。しかし今回は課外授業となっているため、「無理のない範囲ならば、できるだけ行事に参加させること」が大切となります。ツアーナースは「今、児童はどこまでなら参加できそうなのか」「どのくらいの状態になった時、安静にさせた方が良いのか」をアセスメントし、臨機応変に行動しなくてはいけません。こういった臨機応変な対応力は、医療現場にでこそ培われるものであるといえます。そのため、ツアーナースは原則として最低でも1年以上医療現場での経験を積んだ方でないと働けないという求人先も多く、ツアーナースは簡単で楽にできる仕事ではないということがこういう面からも理解頂けるかと思います。
7.ツアーナースの真実その⑥小児科の経験がなくても採用OK
一方で、中には小児科経験がないと引き受けることが難しいツアーナース案件もあります。それは、医療的ケアが必要な児童・生徒が多く通っている、特別養護学校の課外授業でのツアーナースです。なぜ引き受けることが難しいのか。それは医療的ケアを行う手技の問題というよりも、医療的ケアが必要な児童・生徒を持つ保護者への対応が難しいからです。医療的ケアが必要な児童・生徒の場合、日中は看護師ではなく保護者が行っていることが多いのが現状です。そして保護者は子供個々にあったきめ細やかなケアを行っており、非日常である課外授業中でもそういったきめ細やかなケアをツアーナースへ求めてきます。そのため、医療的な手技の問題もあるんですが、こういった保護者とのコミュニケーションの取り方というのは以前から小児科の経験があるナースのほうが慣れているのです。
実際に、特別養護学校のツアーナースとして小児科経験のないナースが添乗した看護師が話していましたが、保護者とのコミュニケーションがうまくいかずにちょっとしたトラブルとなり大変な思いをされたそうです。こういった事情から、より専門的な技術や知識を要するツアーナースについては、小児科経験があると尚可、とされている傾向にあります。小児科経験がなくてもツアーナース自体を行うことは可能ですが、転職相談I美さんのように「ツアーナースを本業にしたい」と考えている方は、小児科経験があるとなお幅広く仕事を受けることができるため、より有利であるといえます。
8.ツアーナースの真実その⑦病院とはまた違った「達成感」を得られる仕事
これは私個人の意見も入るのですがツアーナースの人気の理由は「達成感を得られる」ということが大きいんじゃないかと思います。大人になると、毎日がめまぐるしく過ぎていきます。しかし、課外授業では数日の間にたくさんのイベントが詰まっており、子供たちはみんな特別な時間を過ごします。その特別な時間を、参加した子供たち全員が安全に、そして楽しく過ごせるようにするためのお手伝いをすること、それがツアーナースのお仕事です。序盤に体調を崩した児童が、帰りがけに笑顔で「ありがとう」と言ってくれると、患者さんが退院される時のような達成感を得ることができます。また、ツアーナースでは病院以上にたくさんの児童・生徒を相手にするため、1人1人にかけられる時間は限られています。しかし、児童・生徒たちにとって、ツアーナースは1人しかいないため、どの子も「看護師さん」として頼ってくれますし、人なつっこい子は自ら話しかけてきてくれます。こういった純粋で素直な子供たちに看護師として「受け入れてもらう」というのは、病院とはまた違った、看護師としてのやりがいにもつながっていくと思います。
ツアーナースは子供たちと思い出の共有をしながら、看護キャリアとしても臨機応変の対応力を磨いたりできる人気の仕事です。ツアーナースは現場ごとに適切な判断をしつつ参加者を安心させてあげられるような配慮を心がけなくてはなりません。しかし実際に求人を探すとなると、希少求人なので、マイナビ看護師のような看護師の転職エージェントを利用しないことには情報をゲットするのは難しいでしょう。
看護師転職エージェントを使ってツアーナースの求人を見つけた看護師は「ツアーナース未経験の方でも応募できるように、研修システムが充実していた」「日給14000円前後とツアーナースの割には高給与で、仕事内容と比べても割にあったものだった」などの評価も出ています。なので本気でツアーナースの求人を探す場合はマイナビ看護師などをチェックしましょう。