働く女性看護師なら1度は気になったことがあるであろう「産休」や「育休」という制度ですが、近年では女性の社会進出が広がったこともありかなり取得しやすくなってきました。「産休」に関してはいつからもらえるかといえば産後8週間は休業が義務付けられているので在職していれば取得は確実となりました。育休に関しては、厚生労働省のデータによると男性は6.1%程度ですが、女性の取得率は80%を超えています(厚労省HPより)。看護師は女性が大半を占める職場であり、制度の充実に力を入れている病院は少なくありません。本記事では「産休」や「育休」についての現状や、産休・育休実績ありの看護師求人の統計、看護師が産後に復帰しやすい職場の例、休暇中の給料や手当、いつからもらえるかなどについて記載していきます。
1.産休・育休の概要と産休・育休期間の給料や手当について
まず、産休・育休の概要について簡単に解説します。産休は正確に言うと、「産前休業」と「産後休業」に別れていて、産前休業=出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から自分の意志で取得が可能な期間、産後休業=出産後8週間は国のルール上就業できない期間のことで、産後6週間以降は医療機関の診断によっては就業できます。
そして「育児休業」はいつからかいつまでかというと、産後休業が終了してから基本的には子供が1歳になる前日までの期間のことを言い、任意で取得が可能です。育児休業に関しては、1歳半までの延長が認められることもあります。 つまり産後休業は「休まなければならない」期間であり、産前休業・育児休業は自身で申請することで休む権利を得られます(厚労省のHP参照)。
続いて産休・育休においての給料や手当ですが、給料の支給義務は法律では定まっていません。そのため多くの場合で産休・育休中に関しては給料が無給となります。 しかし、産休・育休中は無収入とはなりません。生活が困難にならないように自身の加入している健康保険(保険証発行機関)から給与(総支給額)の約3分の2の給付金が支給されます。この手当は過去12ヶ月の標準月額報酬から算出されますが現在の健康保険に加入して12ヶ月未満の場合には(入職してから1年以内)全国標準月額報酬、または働いた期間の標準月額報酬から算出し金額の低い方が採用されます。これら給付金に対して住民税はかかりますが社会保険料などについては全て免除になります。
また、育休中には「育児休業手当金」が、国家公務員は共済から民間企業は雇用保険(ハローワーク)から支給されます。基本的には産休に入る直前の月の給料を6ヶ月分の平均値から算出されます。育児休業申請時に勤続年数が1年に満たない方は手当は支給されません。
最後に国から支給される手当「児童手当」があります。この手当で月に15000円支給されます。お子様の成長に合わせて減額されていきますが育休中の期間では0歳~3歳に当たるので一律で15000円です。これは毎月支給されるものではなく市町村に届け出てから年数回にわけてまとまった金額を支給されるようになりますのでご注意ください。また夫婦どちらかの年収が960万円を超えるときには減額されます。
(補足)1年目で妊娠した場合産休・育休は取得できるのか?実質何年目からもらえる?
例えば1年目で妊娠した場合でも、産休は条件なく取得することができます。妊娠が原因で処遇が不利益になることはありません。雇用側も請求されたら断る権限は与えられていませんので取得させることが義務となっています。
一方で育児休暇ですが産後休業を明けた翌日から育児休業へと切り替わります。育児休業については「就業から一年未満の労働者は対象外」となります。しかし、妊娠発覚した時に就業から1年経っていなくても、申請時期(育休開始前1ヶ月頃)に1年経っていれば1年目の看護師でも取得することが可能です。出産日が鍵となります。
例A:4月入職1年目8月ころ妊娠発覚、翌年4月に出産、育児休業の申請を翌年5月というスケジュールだと育児休業は取れるわけです。
しかし注意しておきたいのが育児休業給付金についてです。休業開始2年前まで遡り、雇用保険に加入していた期間が12ヶ月あることが条件となっています(月に11日以上の労働)。例Aの場合だと育児休業は取得できますが、育児休業給付金は支給対象外となってしまいます。1年目で育児休業給付金を貰うためには産休に入るタイミングが鍵ですね。
例B:4月入職1年目10月頃妊娠発覚、翌年6月に出産、産休に入ったのは5月だったので条件を満たしており育児休業給付金が支給されます。
1年目でも妊娠する時期によって大きく貰える給付金が変わります。「妊娠発覚」と同時に自分が給付金の対象かどうか調べ、出産・育児に備える必要があります。
2.「産休・育休実績あり」の看護師求人の割合は?常勤の方がとりやすい?
ここまでは産休・育休制度の総論でしたが、ここからは看護師に絞って言及していきます。看護師は女性が多い職種で、その90%以上は女性ですが実際に「産休・育休実績あり」の求人というとどれくらいの割合でしょうか?「産休・育休実績あり」の求人についてマイナビ看護師を参考に検討してみましょう。 ここでは待遇などの給料の話は置いておいて単純に求人数の話です。
まずマイナビ看護師では全体の公開求人(2019.9月)のうち、「産休・育休実績あり」の求人は7,316件、全体の公開求人件数35,884件に対して約20.3%という結果になりました。
冒頭で「日本社会全体の育休取得率は80%を超えている」とお伝えした数字からすると20..3%という数字は率直に低いと感じますね。 下記のページでも紹介していますが、看護師の退職理由の第1位は出産育児のためとなっており、ついで第2位は結婚、となっているので、実態としては休業を取得せずに退職する方も少なくないのかもしれません。
また7,316件の「産休・育休実績あり」の求人の内訳をみてみると、常勤70%、その他契約形態30%と圧倒的に常勤雇用の看護師が取得しやすい環境になっていることがわかります。
そして、「産休・育休実績あり」の求人うち、1番取得実績のある部署は常勤病院(病棟)で40%という結果になっています。単純に病院(病棟)で働く看護師の数が多いということもありますが、やはり病院勤務は就業している看護師の数が多いので代替を立てやすいというのも理由のひとつでしょう。 ついで第2位は突出した結果にはならず、常勤クリニック、非常勤病院(病棟)、常勤病院(外来)では全て350~400件前後、5%前後という結果になりました。 最後に1番取得実績の少ない部署は非常勤クリニック勤務で2.3%という結果でした。 マイナビ看護師をリサーチした限りだと「常勤×病院×病棟」というのが1番産休・育休を取得している実績があるという結果に見受けられました。
3.産休・育休から復帰する時に有利な職場・部署は?チェックポイントを紹介
ここからは実際に女性看護師としてどんな条件の職場を選べば、家庭と仕事の両立がしやすいのかをまとめていきたいと思います。これから結婚し将来を見据えて転職したい・育休中だけど事情があって転職しなければならないという方も参考までにご覧下さい。
①院内保育園がある
看護師は女性の平均より給料が高いので、保育園に通うようになると保育料が高額になってしまう傾向にあります。院内保育園があれば病院の福利厚生によって大小ありますが保育料の節約につながります。また保育園激戦区でも「保育園に入れない」という心配は少なくなりますね。 1つの手当と考えることもできますね。
②時短業務・夜勤や委員会業務免除がある
時短業務については法的には「短時間勤務制度において、1日の所定労働時間は原則6時間」と定められています。22時から5時の間の「深夜業務」も、申請すると免除されます。しかしそれ以外の内容については事業者に委ねられていますので、できる限り融通の利く時短制度を導入しているところを探すのが得策です。
③看護師の年齢層が高い
看護師の年齢層の低い(独身世代が多い)と、子供の急病や行事にあまり理解を示して貰えない場合があります。
④子の看護休暇が有給である
法律では子の看護休暇を申請された場合条件を満たしていれば取得させる義務はあります が、給料について有給か無給かは企業に委ねられていますし、実際の取得率も気になるところです。有給休暇から消費している例も意外と少なくありません。 これも1つの手当といえるかもしれません。
上記のような手当などがある条件の職場は産休や育休からは復帰しやすい傾向にあります。院内保育園があったり時短勤務などがあったりすると心強いです。あとさらに踏み込んで、働きやすい部署についても考えてみましょう。これはやはり夜勤がない部署・定時で上がれる部署・新卒が来ない部署(教育がない)がママナースに人気があるようです。総合病院で勤務の場合は産休明けに外来に移動する、もしくは病棟勤務でも時短を利用する看護師も多いです。たくさんの看護師が働いているので急な早退に対応して貰いやすいのは病院勤務のメリットと言えます。 もちろん中には施設看護師を選ぶ人もいます。有料老人ホームや、保育園、デイサービスなどの施設で看護師を募集していることがありますが夜勤もなく比較的土日に休みやすいというメリットがあります。
医療というのは日々新しい知識や技術が更新され続ける分野であり、看護師はいつまでも勉強とスキルアップを求められます。いつから勉強をやめていいというのはありません。 産休・育休のように長期間休業することで医療現場への復帰を躊躇ってしまったり、怖さを感じてしまうことも少なくありません。 育休中はやはり子育てに専念することも大切ですが、看護師に戻るための勉強も忘れないようにしましょう。
ここではいくつか産休・育休中にスキルアップできる、もしくは取得できる資格をご紹介します。 やはり、育休中とはいえ受講期間は短く数日・数時間で取得できる資格がオススメです。1週間以内のスケジュールで取得可能な資格を下記にまとめていきます。 いつからでもスタートできます。
①心理相談員(簡単なカウンセリングと心理に関する資格です。) 参考URL
②BLS(心肺蘇生法についての救命の資格です。) 参考URL
③医療環境管理士 :参考URL
④医療福祉環境アドバイザー :参考URL
(上記2つは医療福祉検定協会が主体となる感染・医療安全・教育などに関するスキルアップ資格です。)
⑤ベビーマッサージ(スキンシップ、コミュニケーションを学び絆を深める方法を学びます。インストラクターまで取れば直接仕事に生かせる機会がありそうです。) :参考URL