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性暴力被害者支援看護師(SANE)とは、性暴力を受けた被害者からの相談・看護ケア・心理支援・情報提供・患者教育など、専門的な看護ケアを提供できる看護師のことです。日本では年間で成人女性の25万人が強制性交被害にあっているとも言われています。そのような被害者を支援する性暴力被害者支援看護師とはどのような専門職なのか、またどのような場所で活躍できるのか、資格取得・転職方法について解説します。

1,性暴力被害者支援看護職(SANE)とは?

「性暴力被害者」とは、年齢や性別に関わらず、他人だけでなく身近な人である夫婦や恋人から望まない性的行為を強要された人たちを指します。性暴力被害者支援看護職(sexual assault nurse examiner;以下SANE)はそれらの性暴力によって心や体に傷を負った被害者に対して、専門的な知識や技術を訓練された上で、心身の傷のケアや二次被害を避ける等の適切なケアが行える女性の看護師・助産師・保健師のことです。

日本では、まだあまり馴染みのないSANEですが、このSANEとしての看護師の役割は1970年代にアメリカで始まっています。今ではアメリカ各地・カナダにおいて『SANEプログラム』が広がっているといわれています。さらに全世界では26カ国でSANEが活躍しています。アメリカには法看護学(Forensic Nursing)といわれる事故や事件などの法的な問題に遭った人への看護ケアに関する看護学の分野があり、SANEはこの法看護学分野の一つと考えられます。アメリカでは、SANEトリートセンターが700箇所あり、病院においては救急センターにSANEが配置されて被害者に対しての専門的なケアを行っています。SANEプログラムがすでに定着している病院では、性暴力被害に遭った人は直接警察に行かなくても、性感染症・緊急避妊の処方箋・医師による診察などが迅速に行われる環境が備わっています。

日本における性暴力被害者支援のとりくみについてですが、日本では性暴力被害に遭った場合、病院受診・警察の性犯罪被害相談電話「#8103(ハートさん)」や関連支援機関へ相談することなどができます。なかでも「ワンストップ支援センター」といわれる性犯罪・性暴力被害者のための支援センターの普及が全国で進んでいます。このような支援センターでSANEが支援チームの一員としての役割を果たしています。

ワンストップ支援センターとは

ワンストップ支援センターとは、性暴力の被害直後から心と体に対するトータルの支援を一つの場所で受けられる取り組みを実践している施設のことです。具体的には、「性犯罪・性暴力被害者に、被害直後からの総合的な支援(産婦人科医療、相談・カウンセリング等の心理的支援、捜査関連の支援、法的支援等)を可能な限り一か所で提供することにより、被害者の心身の負担を軽減し、その健康の回復を図るとともに、警察への届出の促進・被害の潜伏化防止を目的」とする施設として位置付けられています。

ワンストップ支援センターは、以下のような形態に分けられます。
・「病院拠点型」:病院内に相談センターを置く
・「相談拠点型」:病院から近い場所に相談センターを置く
・「相談センターを中心とした連携型」:相談センターと産婦人科医療を提供できる複数の病院と連携する

ワンストップ支援センターがどこにあるのかは、こちらのサイトから一覧で検索することが可能です。

 

日本でSANEとなるためには、「日本フォレンジック看護学会」(URL)や「特定非営利活動法人女性の安全と健康のための支援教育センター」(URL)が中心として開かれている研修に参加し、そこでの研修を修了するのがいっぱんてきです。2019年度に開催された「性暴力被害者支援看護職(SANE)養成プログラム2019」(日本福祉大学履修証明プログラム)では、性暴力支援センターや支援事業に関わる看護職・またこの領
域に興味のある看護職が対象者として開かれています。この研修では、性暴力被害者のさまざまなニーズに対するケアをトータルに提供するための知識や技術を学ぶことができたようです。

2,性暴力被害者支援看護職(SANE)の仕事内容・役割、活動できる場所とは?

日本では、性暴力被害者等に対する法医学的な証拠の採取などは医師の業務となっています。よって、SANEは医師や関連職種と連携しながら、性暴力被害を受けた人への医療相談や精神的サポート・必要な情報提供などが重要な役割になるといえるでしょう。具体的な仕事内容としては以下のようなことが挙げられます。

・被害者からの相談を受けて心身の状態に配慮しながら必要な情報を医師とともに得る
・被害者の話を心情に配慮しながら傾聴し、必要な情報の提供とこれからどのような支援が受けられかの説明を行う
・他関連機関との連携など、医療コーディネーターとしての役割を担う

SANEとして活躍できる場所についても言及しておきます。上記で説明したようなSANE養成講座の研修を受け資格を取得した看護師はいるものの、SANEだけの活動を専門的に行なっている看護師は少ない状況のようです。SANEの資格を持ちながら、普段は病院で勤務している看護師がほとんどといえるでしょう。その背景としてSANE看護師が資格を生かして働ける「病院拠点型」のワンストップ支援センターが少ないためといえます。平成29年の調査では、ワンストップ支援センターは全国39施設にあります。支援センターの形態の内訳も含めてご紹介しておきます。

・病院拠点型 7 (都道府県設置主体:4、警察単独:1、病院単独:1、共同設置:1」)
・相談センター拠点型 2(都道府県単独)
・相談センターを中心とした連携型 25(都道府県単独、NPO法人など)

病院拠点となっているのは全体の26%であり、かつ24時間365日対応しているのは全体の24%1となっています(参照URL)。そのうち、名古屋第二赤十字病院にある「性暴力救援センター日赤なごや なごみ」は、性暴力被害者支援看護師が実際に活躍しており、被害者からの相談に対してアドボケーターと呼ばれる支援員や医療ソーシャルワーカーらとともに対応しています(参照:名古屋第二赤十字病院「性暴力救援センター日赤なごや なごみ」)ほかにもSANEが活躍できる場所としては、以下のような行政・施設が考えられます。

・婦人保護施設・女性支援施設
・配偶者暴力相談支援センター
・精神保健福祉センター
・警察・行政
・被害者支援センター
・NPO法人・かけこみ女性センター
・民間被害者支援団体など

ただし、これらの行政・施設・団体などではSANEである看護師が正規職員として働くことができるかは、まだ難しい状況であるかもしれません。各々の求人を随時チェックする必要があります。

SANEの資格を生かせる職場への転職方法

医療者として、また社会的問題として捉えて性暴力被害にあった人々の支援を行いたいという人も多く、SANEに興味を持つ看護師も多いのではないでしょうか。SANEとして活躍できる場所が少ないものの、前述のワンストップ支援センターのような施設が今後増えていけば、SANEとして活躍することも可能でしょう。

SANEに興味を持った人は、まずはSANEの養成プログラムへ参加をし、性暴力被害者への支援や性暴力などを取り巻く問題や対処法に対する知識を習得をすることをおすすめします。資格を取得後、実際の現場で働きたいのなら、ワンストップ支援センター一覧を参考にし、SANE看護師として働ける場所を探しましょう。その際には、看護師転職サイトに登録しながら、病院検索をするのも一つの方法です。雇用される施設も限られていることから、地道に転職活動を続けていくことが求められるで
しょう。

性暴力被害者は、心理的な点からも警察に届け出たり、病院に受診することを避けたりして、表面化しにくいことも指摘されています。しかし、今後、ワンストップ支援センターのような支援施設の整備や普及が進めれば、被害者もより相談しやすく、さらにそこで働くSANE看護師の役割も求められていきます。この分野に興味のある看護師は、ぜひSANEの資格取得からはじめてみることをおすすめします。