目次
1.療養型病棟とは?療養型病棟の種類は?
大抵、多くの人が疾病や怪我などでまず急性期病棟を受診し、そこで治療を受けます。その後、全身状態が落ち着いたとしても、なかには麻痺などの障害が残る場合があります。リハビリを経ても日常生活に戻るのが困難な場合や、慢性疾患で長期的に療養を必要とする場合、そんな患者さんたちの受け皿となってくるのが『療養型病棟』です。療養型病棟とは、急性期は脱したものの、まだ引き続き継続的な治療や看護を必要としている患者が中長期的に療養するための病棟ということになります。療養型病棟は一般病棟とは異なる特徴を持ちますので、ここでは療養型病棟への転職を考えている看護師に向けて、療養型病棟の特徴やそのメリット、デメリットなどを解説していきたいと思います。
まず療養型病棟がどのようなものなのか簡単にご説明しときますね。療養病床は、主に急性期の疾患を扱う一般病床に対し、慢性期の疾患を扱うのが療養病床です。分かりやすくいえば、病気や加齢などで、長期にわたり療養を必要とする患者さんのための病棟ですね。なので、比較的状態が安定した患者さんが多く入院されています。また、長期入院の患者さんが多く医療処置が少ない点、病床面積が広くゆとりがある点、談話室の設置なども義務付けられている点なども特徴です。看護師の配置基準も急性期病棟に比べて少なく、看護師一人あたりの患者数は多くなりますが、その分看護補助者や介護職員などの配置も設定されています。
あともう1つの療養型病棟の特徴として知っておいて欲しいのは、利用方法によってその種類が2つに分かれていることです。医療保険を使う『医療療養病床』と介護保険を使う『介護療養病床』です。対象となる患者さんや業務内容も変わってくるのでこの違いについては、しっかりと押さえておいた方がいいでしょう。
医療療養病床 | 介護療養病床 | |
適用保険 | 医療保険 | 介護保険 |
年齢制限 | なし | 原則として65歳以上(65歳未満でも受け入れる場合もある) |
入院条件 | 「慢性期」の病状であること | 要介護認定を受けており(要介護1以上)医療措置が必要 |
看護師の配置基準 | (100床あたり)4:1 | (100床あたり)6:1 |
その他特徴 | 看護補助者の配置基準が定められている | 介護職員の配置基準が定められている |
療養病床の再編は、医療費抑制を目的とする国の方針で決定し、すでに2018年度3月に介護療養病床の廃止が決まっています。ただし、突然の廃止は難しいので、3~6年間の経過措置期間を設けた後、受け皿となる新たに3新施設へと運営を移す方針が決定しています。しかしその施設も現在3つが検討されていますが、反対意見も多く、いまだ流動的でどうなるかは決まっていません。
ただ、療養病床再編による影響はすでに病床数にもはっきりと表れていて、療養型病棟は以前は施設数も増加傾向にあり、厚生労働省のデータによると2006年時点には全国の医療療養病床数は約26.2万床、介護療養病床は12.2万床もあったんですが、それが、2018年度の時点では医療療養病床はほぼ横ばいの27.7万床なのに対し、介護療養病床は5.9万床減の約6.3万床へと大幅に減少しています。この結果は、廃止に伴う影響が表れていると考えられます。
2.療養型病棟の看護師の仕事内容は?1日の流れは?残業事情は?
8:30 | 朝礼、申し送り |
8:50 | 環境整備、バイタルサイン測定 |
9:00 | おむつ交換、入浴介助、清潔ケア、医療処置(喀痰吸引、褥瘡処置など) |
10:00 | 投薬、吸入、看護記録 |
11:00 | 注入の準備、体位変換、移乗 |
12:00 | 投薬、注入、食事セッティング、介助 |
12:30 | 昼休憩 |
13:30 | 口腔ケア、体位変換、移乗 |
14:00 | バイタルサイン測定、看護記録、医師に報告 |
15:00 | 投薬、医療処置(喀痰吸入、褥瘡処置など) |
16:00 | 申し送り、看護記録 |
17:00 | 業務終了 |
ただし、医療療養病床と介護療養病床で業務内容に違いがある場合もあるようです。医療療養病床の場合は看護師がそういった介護業務を兼任する場合がほとんどですが、介護職員の配置が決められている介護療養病床では看護師と介護職員の業務が分けられていて、介護業務は看護職員が担ってくれる場合もあるようです。転職する際にはそういった業務内容についても確認しておいた方がいいでしょうね。
あ、ただ「残業は少なくなる」という特徴はあります。基本的には状態が安定している患者さんが多く、緊急入院や手術もほぼないため、それほど残業はないようです。ただし、患者さんの状態が悪かったり、急変や看取りなどがあったりした場合は残業もあるそうですよ。ですが、急性期病棟に比べて残業時間は圧倒的に少ないのは事実です。仕事とプライベートの両立がしやすいということを理由に療養型病棟への転職を希望する看護師さんも多くいらっしゃるくらいですからね。
3.療養型病棟へ看護師が転職するメリット・デメリットは?
メリット①残業が少なく、仕事とプライベートを両立できる
療養型病棟の患者さんは基本的に病状が安定しており、急変が少なく、緊急入院や手術などもほとんどありません。そのため、一般病棟などに比べると残業が少ない傾向にあり、定時に帰れることが多いようです。仕事とプライベートの両立ができるのが、療養型病棟で働く看護師の大きな魅力の1つでしょう。
メリット②患者さんとゆっくりと関わることができる
療養型病棟は、入院が長期にわたる患者さんが多く、ゆったりとした雰囲気のため、一人ひとりと接する時間が長くなります。患者さんとしっかりと向き合うことができるので、その人に合わせた看護をしたいという看護師さんにはおすすめです。
メリット③幅広い業務を経験できる
急性期病棟などの一般病棟と違い、療養型病棟では看護師が看護から介護まで幅広い業務を行うことになります。色々な業務を経験でき、看護師としての幅が広がるのが療養型病棟で働くメリットの1つです。また、業務内容は多くても、急性期病棟などと違って時間に追われることがあまりないため、比較的ゆとりをもって丁寧に看護や介護ケアを行うことができます。
デメリット①教育体制はあまり整っていないところが多い
療養型病棟では、どちらかというとベテランの看護師が多く、教育体制はあまり整っていないところが多いです。設備なども急性期病棟などに比べれば不十分で、看護師ひとりあたりの受け持ち人数も急性期病棟に比べれば多くなるので、新人看護師や経験の浅い看護師にはあまりおすすめできません。ある程度経験年数があり、自分で判断できる技術や知識を持った看護師の方が働きやすい職場といえるでしょう。
デメリット②体力が必要
療養型病棟はADLが自立している患者が少なく、どちらかというと介護度が高い患者が多いので、自然とおむつ交換やトイレ介助、体位変換、移乗などを行う機会が多くなります。そのため、業務を行うにあたり相当な体力を使うので、腰痛などを患う看護師も多いのが現状です。体力に自信がなければあまりおすすめはできません。
デメリット③高度な医療措置などは少なくスキルアップしにくい
療養型病棟の患者は、脳血管疾患や認知症などによりコミュニケーションがとれない患者が多く入院されていることから、やりがいを得られず、仕事に物足りなさを感じる場合があります。また、高度な医療行為や看護技術を行う機会はほとんどなく、急変も少ないので看護業務と介護業務も大体ルーチンワークになりがちです。高度な看護スキルを身に付けたい向上心ある看護師には物足りない場合があります。ただ、スキルアップを目指すのであれば療養型病棟から、摂食・嚥下障害認定看護師や皮膚・排泄ケア認定看護師などの認定看護師の資格を目指す看護師もいます。急性期病棟などと比べて、残業が少ない分、資格取得への勉強時間も確保しやすいようです。
4.療養型病棟の看護師へ転職した看護師の体験談
★療養型病棟に転職するまでの経緯やきっかけについて教えてください
看護学校卒業後、4年間大学病院の脳神経外科病棟で勤務していました。その後結婚してしばらく家事子育てに集中していました。子供が幼稚園に上がる頃から職場復帰するママ友が増え出して、私も焦っていた時期もありました。でも不器用な私は、子供の送り迎えと仕事、家事をそつなくこなすことなんてできないと思ってそのまま専業主婦をやっていました。いつかはまた看護師をやりたいと思いながらも、どんどん時間が流れました。そして子供が2人とも小学生になったタイミングで療養型病棟で社会復帰したんです。10年近くのブランクがある私が本当に仕事なんて見つかるのか不安でしたね。でもマイナビ看護師から自宅からすぐのところにある職場を紹介してもらえたんです。職場見学や面接の日も調整してもらって、とんとん拍子で決まりました。1人だったら、きっと今でも勇気が出なくて今でも専業主婦をしていたんじゃないかなと思います。
★療養型病棟で働く為に必要なスキルはどんなものがありますか?
10年近くブランクがある私が言うのもなんですが、やはり病棟経験は3年以上あることが望ましいと思います。重症の患者さんこそいないものの、一般病棟での経験がないことには務まらないと思います。多くの患者さんにインシュリン注射、経管栄養、酸素吸入、創部処置、採血、点滴等が必要となるので、それらの経験も必要です。また、療養型病棟では看護スタッフの配置は一般病棟よりも少なめですが、その分、介護スタッフさんや看護助手さんが手厚く配置されていますので、他のスタッフの方とのコミュニケーションをしっかりとれるということも大切です。夜間帯は看護師1人と介護スタッフ2人となるので、介護スタッフさんへの声かけも本当に重要になります。
★復職してみて療養型病棟の職場環境・給料はどうですか?
10年前に大学病院でしか勤務経験がなかった私にとって、療養型病棟の職場環境は新しいことばかりでした。スタッフの年齢層が20代に集中している急性期病棟とは違い、今の療養型病棟は30代から50代の看護師がメインとなっていて、その分、お互いの家庭の都合や体調不良等があっても譲り合う気持ちが強く、師長もブランクを乗り越えながらも働いてきた方なのでブランクがある私の不安もしっかりと受け止めてくれています。患者さんやご家族も、長期的にお付き合いすることが多いので、アットホームな環境です。お給料は大学病院の時よりは低くなりましたが、有給を100%消化できることを勘案すれば、大学病院にも負けてないと思います。休憩室にはいつも、スタッフの誰かが家族旅行に行ってきた時のお土産があります。
★療養型病棟に勤務するメリット・デメリットは?
療養型のメリットと言えば、やはり残業が少ないことだと思います。9時から17時までですが、10分前に入って17時ちょうどに病棟を出る感じですね。急性期病院になるとそうはいきません。有給もみんながとっているので、他の人に気を遣うこともありません。緊急入院もないので、予定外のことでバタバタしてイライラすることもありません。私みたいに、家事・子育てがある主婦から人気があるというのが頷けます。デメリットは、腰が痛くなることでしょうか。自力で体位変換できない方が多いので、2時間ごとにおむつ交換&体位変換リレーです。急性期で経験を積みたいという若手の方にとっては、仕事の内容が単調に感じられるかもしれません。
療養型病棟は少子高齢化に伴い、急性期病棟の受け皿となる重要な存在です。今後その需要はますます高くなり、療養型病棟の看護師にも注目が集まると予想されます。急性期病棟などの勤務から離れ、比較的余裕をもって働きたい看護師さんにはおすすめです。残業も少なく、患者さんと一対一で向き合いじっくりと個別性のある看護を行うことができる療養型病棟ですが、求人を探すとなると実は膨大な検索結果が出て来てしまい「どの療養型病棟が自分に向いているか」わからないことも多いです。そんな時に強い味方になるのがマイナビ看護師などの大手の看護師転職エージェントです。「年収500万以上の都内の療養型病棟」「残業が基本なしの療養型病棟」など希望条件を出せば、マッチした求人を複数提案してくれます。無料で利用できますので是非ご検討下さい。