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看護師としてパートから正社員へ転職することを検討している方は多いでしょう。正社員になることで、安定した給与や福利厚生が得られますが、転職にはさまざまなリスクも伴います。特に、看護師特有の労働条件や雇用形態に関する法律を理解していないと、失敗しやすい点もあります。このコンテンツでは、パートから正社員への転職において、具体的な転職体験談やよくある失敗、知っておくべき労働法の知識を詳しく解説します。これにより、転職を成功させるためのポイントを押さえることができるでしょう。まずはパートから正社員への転職体験談をご紹介します。
■【体験談】MCナースネットのパート常連さん!パートから正社員へ転職し常勤看護師へ
パートから正社員へ転職した常勤看護師Aさん | |
性別 | 女性 |
年齢(パートから正社員へ転職した当時) | 32歳 |
転職前の職場 | 派遣会社(MCナース)のパート・アルバイト・北海道 |
転職後の職場 | 個人経営のクリニック・北海道・日勤専従(週休2日) |
使った転職エージェント | MCナースネット |
転職理由 | 子どもの持病がよくなりフルタイム勤務が可能になったため |
①デイサービス利用者様が来る前のお茶やおしぼり・新聞の準備
②曜日ごとの利用者様の作っているものやワークの準備
③入浴の準備・看護師は預かりの軟膏や湿布の準備とケア版の確認
④利用者様の送迎に向かう
⑤デイサービス到着後ヘルパーさんと入浴前にバイタルチェックとお茶出し
⑥入浴後の軟膏・湿布の介助
⑥バイタル変動ある方の再チェック・特変あれば家族に電話するか頓服薬があれば投与、または入浴休みの判断をし着替えのみ行うなど
⑦昼食前後の内服薬管理
⑧リハビリの先生お休みの時は、リハビリの介助も
⑨3時のおやつ前にレクレーション
⑩おやつ介助
⑪トイレ介助
⑫帰りの支度介助・送迎
⑬帰宅後は1日の記録作業、申し送り内容を記載
一般的な介護デイサービスのパートの業務かと思います。私は旦那が休みの土日祝日に主にアルバイトしてその間は子守を旦那に任すことができたので、土日祝日のみ集中して勤務してました。時間給は1200円くらいで、1カ月およそ1日8時間勤務で8~10日間働いたとして76,800円~96,000円は稼ぐことが出来ていました。アルバイトなので、ボーナスはないですが1年間同じペースで勤務して約1,152,000円で、お盆やお正月などの長期休みに勤務すると、もう少し年収は多くなります。私がパートだった理由は子供が持病持ちだったことです。子育ての関係でフルタイムで勤務ができなくてやむを得ず低収入な状態になっていました。ただMCナースネットは自分のライフスタイルにあった形で勤務日数や勤務希望日を決めることができたので、働きやすかったとは思います。
■パートから正社員への転職でよくある失敗
1. 正社員の業務量や責任の増加を軽視する
問題点:
多くの看護師が、正社員になれば安定した収入や福利厚生を得られると考えますが、同時に業務量や責任も大幅に増えることを軽視するケースがよくあります。パート勤務では、担当する業務が限定的であったり、シフトによって勤務時間を調整しやすい状況が多いですが、正社員になるとより多くの業務を抱え、チームの一員としての責任も増します。
- 例:パートでは主に軽度なケアや補助的な業務を担当していた看護師が、正社員になると患者のメインケアや病棟全体の管理、さらには後輩の指導などを任されることが増えるケースがあります。このような業務量の増加に対する心の準備ができていないと、仕事のストレスが大幅に増え、最悪の場合は早期離職につながることもあります。
解決策:
- 事前に業務内容を確認する:面接時や内定後に、具体的な業務内容や期待される役割について詳細に質問し、業務量や責任範囲を理解しておくことが重要です。
- スキルアップの準備:正社員として必要なスキルや知識を事前に磨いておくことで、業務に対する不安を軽減できます。研修プログラムの有無やサポート体制も確認しましょう。
2. 労働条件や働き方の違いを見落とす
問題点:
パート勤務の際は比較的自由にシフトを調整できたり、フルタイムでの勤務を避けられるため、生活と仕事のバランスが取りやすい場合があります。しかし、正社員になるとフルタイム勤務が基本となり、長時間労働やシフトの調整が難しくなる可能性があります。また、看護師の場合、夜勤や早朝シフトなど、不規則な勤務が増えることがあります。
- 例:パート時代は週3日の短時間勤務で家事や育児と両立していた看護師が、正社員になると週5日のフルタイム勤務に加えて、夜勤や休日勤務が頻繁に発生することがあります。この結果、生活のリズムが崩れ、体調を崩すことや家族との時間が減ることでストレスを感じることもあります。
解決策:
- シフトや勤務時間についての事前確認:正社員になった際にどのようなシフト体制が導入されるのか、休日や勤務時間について詳細に確認しておくことが重要です。特に、夜勤やシフトの回数について質問し、自分のライフスタイルと合致するか確認しましょう。
- 柔軟な働き方を交渉する:特に育児や介護などの家庭事情がある場合は、正社員でも時短勤務やフレックスタイム制度が利用できるかどうかを確認し、必要に応じて交渉しましょう。
3. 人間関係やチーム内での役割変化に対応できない
問題点:
パート勤務では比較的他のスタッフとの関わりが少なく、特定の業務だけに集中できることが多いですが、正社員になると、他のスタッフとの密な連携が必要となり、場合によってはチーム全体のマネジメントを求められることもあります。これに対して適応できない場合、職場でのストレスが増し、人間関係のトラブルに発展することがあります。
- 例:パート勤務時代は特定の患者ケアだけに集中していた看護師が、正社員になると病棟全体のスケジュール調整やスタッフ間の連携を求められるケースがあります。リーダー的な役割を任されることもあり、急な責任増加に適応できないことがあります。
解決策:
- コミュニケーションスキルを磨く:正社員としては、業務スキルだけでなく、スタッフ間のコミュニケーションやチームワークも重要です。積極的に意見を交換し、良好な人間関係を築く努力をしましょう。
- サポート体制の確認:新しい職場や役職でのサポート体制が整っているか確認し、困ったときに相談できるメンターや上司がいるかどうかを事前に把握しておくと安心です。
4. 給与や待遇に対する期待と現実のギャップ
問題点:
正社員になればパート時代よりも給与が大幅に増えると期待して転職するケースが多いですが、実際には基本給や手当がパート時代と大きく変わらないこともあります。特に、夜勤手当やボーナスが加算される場合でも、残業や休日出勤が増えることで、実際に自由に使える時間が減る可能性があります。
- 例:正社員になったことで基本給が増えたが、その分夜勤や残業が多くなり、結果的に自由時間が減少してしまった看護師がいます。また、給与明細をよく確認すると、パート時代にあった手当が減っていたり、税金や保険料の増加で思ったほどの手取りが増えないこともあります。
解決策:
- 給与明細の確認:正社員になった後の給与体系についてしっかりと確認し、基本給、各種手当、ボーナス、残業代などの詳細を把握しましょう。また、転職前にこれらの情報を採用担当者に直接確認することが重要です。
- 生活費の見直し:正社員になったことで支出が増える場合もあるため、生活費や税金、社会保険料などの変動を考慮して生活設計を見直すことが必要です。
■パートから正社員へ転職する際に知っておくべき労働法の知識
1. 有期雇用契約と無期雇用契約の違い
有期雇用契約とは
パートタイムで働く看護師は多くの場合、有期雇用契約で雇用されています。有期雇用契約とは、特定の期間(たとえば1年など)ごとに契約を更新する形で、契約期間が明確に定められています。この契約は、期間が終了する際に契約が更新されるかどうかが雇用主に委ねられるため、不安定な雇用形態といえます。
無期雇用契約とは
一方、正社員の場合は基本的に無期雇用契約が適用されます。無期雇用契約とは、特定の契約期間が設けられておらず、定年や自己都合退職、または特別な事情がない限り、解雇されることはありません。これは、より安定した雇用形態であり、看護師が正社員になる大きなメリットの一つです。
5年ルール
日本の労働契約法では、同一の使用者のもとで有期雇用契約が5年を超えて継続された場合、労働者が申し出ることで無期雇用契約に転換できる規定があります。これを「5年ルール」と呼びます。看護師として5年以上同じ職場でパートとして働いている場合、無期雇用契約に転換できる可能性があるため、正社員への転職を急ぐ前にこの規定を確認することが重要です。
解決策:
- パートで5年以上働いている場合、無期雇用契約の転換権を活用し、安定した雇用形態を確保することも一つの選択肢です。正社員への転職を考える際には、この選択肢と比較して検討しましょう。
2. 労働時間に関する規定
法定労働時間とは
正社員になると、フルタイムでの労働時間が基本となります。労働基準法では、1日8時間、週40時間が「法定労働時間」として定められています。これを超える労働が発生する場合は「時間外労働」となり、割増賃金が支払われる必要があります。
時間外労働と残業代
看護師の場合、正社員になると夜勤や残業が発生することが多いです。労働基準法では、法定労働時間を超える労働には割増賃金が支払われることが義務付けられています。具体的には、以下のような割増率が適用されます。
- 時間外労働(残業):通常の賃金の25%以上
- 休日労働:通常の賃金の35%以上
- 深夜労働(午後10時から午前5時まで):通常の賃金の25%以上
解決策:
- 正社員として働く際には、時間外労働の発生頻度や残業代の支払い状況を事前に確認しましょう。特に、夜勤や深夜労働が多い看護師にとっては、適正な賃金が支払われているかどうかが重要なポイントです。残業代が適切に支払われていない場合は、労働基準監督署に相談することができます。
3. 休憩時間と休日の権利
休憩時間の規定
労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています。また、休憩時間は一度にまとめて与えられる必要があり、分割して与えることは認められていません。正社員になると、勤務時間が長くなることが多いため、この休憩時間がしっかりと確保されているか確認することが重要です。
休日の規定
労働基準法では、1週間に1日以上の休日を与えることが義務付けられています。また、4週間に4日以上の休日を与えることも義務となっています。正社員になると、休日出勤や夜勤が発生することが多くなりますが、休日労働に対しては適切な割増賃金が支払われる必要があります。
解決策:
- 正社員としての勤務体制を確認し、休日や休憩時間が労働基準法に従って適切に確保されているかどうかをチェックしましょう。特に、シフト制の職場では休日や休憩が不足しがちなため、トラブルが起こる前に確認することが大切です。
4. ハラスメント防止と職場環境の整備
パワハラ・セクハラの防止
正社員としての地位が上がると、職場内でのハラスメントに対するリスクも増える可能性があります。日本では、職場でのハラスメント(パワーハラスメントやセクシャルハラスメント)に対する厳しい規制があり、企業にはこれを防止するための義務が課されています。看護師として正社員になると、責任のある業務を任されることも増えますが、その際にハラスメントを受ける可能性も考慮する必要があります。
労働者の権利
労働基準法や労働契約法では、労働者が不当な解雇や待遇を受けた場合に対しての救済手段が規定されています。正社員になることで、パート時代よりも多くの権利が保証されますが、逆に不当な扱いを受けた場合には労働基準監督署や労働組合に相談することができます。
解決策:
- 職場でのハラスメントに対する対応策や相談窓口が整備されているかを確認しましょう。また、万が一トラブルが発生した際には、迅速に労働基準監督署や弁護士などに相談し、適切な対応を取りましょう。
5. 社会保険と福利厚生の違い
社会保険への加入
正社員になると、社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険など)に必ず加入する必要があります。パートタイムの場合、働く時間や収入が一定の基準を下回ると、社会保険に加入しなくてもよい場合がありますが、正社員になることで扶養控除から外れ、自身で社会保険料を支払う必要が出てくることがあります。
福利厚生の充実
正社員になることで、企業が提供する福利厚生をより多く受けることができるケースが多いです。例えば、看護師向けの研修制度やキャリアアップのためのサポート、育児休業や介護休業などの制度を利用できるようになります。また、企業によっては住宅手当や通勤手当などの手当が支給される場合もあります。
解決策:
- 正社員になることで受けられる社会保険や福利厚生の内容を事前に確認しましょう。特に、扶養から外れる場合には、税金や保険料の増加を考慮し、手取り額がどのように変わるのかを理解しておくことが重要です。