看護師のキャリアアップには認定看護師や専門看護師などの資格取得があります。人数的になりやすいのは認定看護師(※種類は後述)の方ですが、認定看護師も専門看護師も一定期間はまとまった通学等が必要なのですぐになれるものではありません。資格取得の先には「資格手当」などで年収アップにつながるという点などは共にメリットとして挙げられます。認定看護師も専門看護師も、単に取得するだけでなく5年ごとの更新をする必要がありますので、継続的に看護学習を続けていく姿勢の現れとしても採用先に評価される資格です。
今日は認定看護師や専門看護師について種類など詳しく教えて下さい。
認定看護師や専門看護師は転職時に資格手当がついたり看護師としてのキャリアメイクに繋がったり非常な有益な資格ですよ。個々に種類も様々あります。まずは認定看護師から紹介しますね。
認定看護師とは、後述する専門看護師と同じく、日本看護協会認定の資格の名前で、救急看護や緩和ケア、糖尿病看護など決められた様々な分野での看護技術と知識を有する資格のことです。日本看護協会によると1997年頃には100人にも満たなかった認定看護師は現在、全21分野で18,000人を超える規模になっており年々増加しています。
認定看護師になるには、いくつかの条件があります。まず、看護師、保健師、助産師、いずれかの免許が必要です。そして、実務経験5年以上で、そのうち目指す認定看護師の領域での実務経験が3年以上ないといけません。つまり、看護師として10年働いていても、透析室勤務が2年しかない場合は、透析看護の認定看護師にはなれません。これらの条件を満たした上で、認定看護師教育機関にて、必要な教育課程(615時間以上)を修了し認定試験に合格した者が、看護協会より認定看護師として認められ登録されます。認定看護師には認定証が交付されますが、これは看護師資格のように一生有効ではなく、5年毎に更新が必要です。
615時間以上の講習を受けるとはなかなかのハードルですね。でも取得が難しいからこそ価値があるんですもんね。認定看護師の種類はどんなものがありますか?ググったので大まかには理解していますが・・・。
特定されている専門看護師(13分野)よりも種類が多く、疾患や対象毎により細かな分野に分かれています。
看護協会のプレスリリースによれば、新規の認定者数も分野によって異なっており、認定看護師総数で一番多いのが「感染管理」の認定看護師で2,744人になっています(※2017年データ)。次に皮膚・排泄ケアで2,419人、緩和ケアで2,211人と続きます。少ないものでいえば不妊症看護で171人などかなり少ないものもあります。逆に言えば人数の少ない認定看護師資格は転職時などに価値が高いということになります。種類ごとの人数は下記です。
認定看護分野 | 新規認定者数 | 認定看護師総数 |
救急看護 | 101(人) | 1,205(人) |
皮膚・排泄ケア | 133(人) | 2,419(人) |
集中ケア | 68(人) | 1,169(人) |
緩和ケア | 204(人) | 2,211(人) |
がん化学療法看護 | 81(人) | 1,530(人) |
がん性疼痛看護 | 13(人) | 768(人) |
訪問看護 | 38(人) | 584(人) |
感染管理 | 215(人) | 2,744(人) |
糖尿病看護 | 43(人) | 863(人) |
不妊症看護 | 9(人) | 171(人) |
新生児集中ケア | 18(人) | 390(人) |
透析看護 | 20(人) | 240(人) |
手術看護 | 73(人) | 536(人) |
乳がん看護 | 26(人) | 342(人) |
摂食・嚥下障害看護 | 65(人) | 733(人) |
小児救急看護 | 17(人) | 266(人) |
認知症看護 | 198(人) | 1,003(人) |
脳卒中リハビリテーション看護 | 44(人) | 679(人) |
がん放射線療法看護 | 31(人) | 254(人) |
慢性呼吸器疾患看護 | 28(人) | 272(人) |
慢性心不全看護 | 53(人) | 349(人) |
認定看護師総数で見ると相当数の認定看護師がいますが、毎年の認定者数で見るとかなり少ないですね。やはりそう簡単になれるものではないということが理解できました。引き続いて質問なんですが、認定看護師になるのは必要な教育課程が615時間以上・期間で6ケ月ということですが、その間の仕事はどうするのが一般的なのでしょうか?辞めて勉強に専念する人が多いのでしょうか?あと費用の面も聞きたいです。
これは認定看護師になるにあたり最も大きな問題ですね。認定看護師になるには、認定看護師教育機関で6か月間学ばなくてはいけませんので、この期間は仕事と勉強をどうバランスするか、または仕事をストップして勉強に専念するかは考えなければいけません。金銭的なことを考えると、仕事と勉強の両立ができるといいのですが、就学中は学ぶことや提出するレポートの数も多く、働きながらは難しい事が多いというのが現実です。となると、一旦勤めを辞め、学業に専念するのが賢明というのが私の意見です。とは言え、入学金、授業料、教材費などにお金がいるのはもちろん、他の地域で実習がある場合は、実習期間の滞在先としてマンションなどを借りる費用が必要になります。このような必要経費をザッと計算すると、認定看護師になるには、およそ200万円ほどかかると言われています。
仕事を辞めた状態で200万円の支出はかなりきついですね。。
看護師の中でも金銭的に余裕がある人はいいですが特に若い看護師などは全員が金銭面に余裕があるわけではありませんよね。
そんな自らのスキルを向上させたいという思いと、金銭的問題で思い悩む看護師のために、看護協会や自治体には奨学金制度があります。制度によっては、一定の条件を満たせば、奨学金の返済が不要なものもありますので、検討する価値はあると思います。
また、病院が、そこで働く看護師が認定看護師になる事を支援してくれる場合もあります。支援内容は医療機関によりますが、研修中は休職扱いとし基本給を保証してくれる所、研修を出張扱いにしてくれる所、入学金から授業料・滞在費用まで全て負担してくれる所と様々です。
ただし、ほとんどの場合、支援する代わりに、認定看護師になった後、一定期間(3年や5年など医療機関による)、病院に残って高水準の看護と知識を患者及び看護職に提供するという雇用契約が結ばれます。古い言い方をすれば「お礼奉公」ですが、「将来的に数年間の雇用契約を守れるか?」「結婚、出産をしても仕事を続ける事ができるか?」という気持ちが先行してしまい、認定看護師支援制度を利用できない人も多いです。ただこのお礼奉公は絶対的な契約ではなく、やむを得ない場合は、病院側と話し合う事もできるので、まずは「認定看護師になりたい」という夢と向上心を優先させてみるのもいいでしょう。
もし私が認定看護師をとる場合は200万も出せる気がしないし、親族に借りるアテもないから結局は奨学金や病院の支援制度を使わないと難しそうだな。やっぱり支援制度は病院によってかなり違うものですか?
正直かなりちがいますね。実際に、認定看護師を目指したいけど現在の勤め先に支援制度がないという人は、将来的な事を考えて、支援制度のある病院に転職し経験を積むという人もいるくらいです。支援制度のある病院というのは、認定看護師を求めている病院という事になり、活躍の場も見出しやすいと言えます。例えば
マイナビ看護師などでは認定看護師の資格取得支援のある病院を検索できます。具体的に問い合わせをすれば自分がどの種類の認定看護師になりたいかなどの相談にも乗ってくれます。
マイナビ看護師(※資格取得支援あり求人の検索)
長い看護師人生でキャリアアップや年収アップにつながるのであれば認定看護師は選択肢の1つなんでしょうし、それに向けて職場を変えて支援を受けるのも私としては頷けます。
認定看護師を目指すのは素晴らしいことですがやはりなるための金銭面では悩む人も多いです。以下は参考に私の知る看護師さんで認定看護師を取得した時の、病院からの支援等に関する実体験なので2名分一応紹介しておきます。
認定看護師取得の利用体験談(※32歳・女性看護師・東京)
私の職場は、通学期間中を出張扱いにしてくれる制度があるので、学費こそ出ませんが、通学期間中は基本給だけはもらます。ただし、学校から戻ってきてから3年間働くことが条件です。私は3年間の縛りがイヤだったのと、その時経済面でも割と余裕があったので、進学する時に「基本給いらないので休職扱いで行かせてください!」と上司を説得して学校に行きました。もちろん学費は全額自腹、通学期間中はお給料ゼロでしたので、勉強しながら減っていく貯金に少しビビッてはいましたが。実際の学校生活では、学費以外にも生活費・通学費・実習中の仮住まいにかかる家賃など、たくさんお金がかかりました。準備を含めても1年弱の学生生活でしたが、ざっくりですが、学費と合わせて150万円以上は使ったと思います。
学校の受験のための勉強は、過去問を中心にしていました。過去問を解いて、出題される分野や傾向を何となく掴んだら、それらに関連する学習をさらに深めていく作業に入りました。1問の問題に対して、たくさん枝葉をつけて肉付けしていくようなイメージです。運良く、第一志望の学校に合格することができましたが、クラスメイトの話では同じ認定コースを開設している学校を併願している人も少なくありませんでした。学校の授業は暗くなるまである日もしばしばで、実習前には事前準備があるので、ひたすら調べ物をしては先生の指導をもらい修正する日々でした。自分の人生の中で一番勉強に時間を使ったんじゃないかという貴重な経験になりました。
認定看護師取得の利用体験談(※37歳・女性看護師・宮城)
私は、認定看護師になるため自施設がある東北から九州にある学校へ進学しました。休職ではなく研修扱いで支援してくれます。学費とテキスト代だけでなく、九州でアパートを借りるための家賃も病院に出してもらえました。うちの病院初の認定看護師なので、特に待遇が厚かったのかもしれません。開講前は1ヶ月前から休みをもらえたので、余裕をもって引越しや事前学習をすることができました。
修了試験は、カリキュラムが終って1~2ヶ月後くらいにありました。その間、ほとんどの人がそれぞれの病院に戻って働きながら試験勉強をしていましたが、私の場合は修了試験が終わるまで休みをもらえていたので、だいぶ恵まれていたほうなんだと思います。また、私の病院は、認定看護師だけでなく、大学院などへの進学や留学(看護系のものに限る)などは、すべて研修としてみなされるので資格支援という意味では恵まれた環境だと思います。
上記のように勤務先によって支援の条件なども様々です。自腹で行っている上記の人は200万も出せるのはなかなかすごいと思います。あと、認定看護師になったあとの「手当」ですが、相応の手当がつくところもありますが、残念ながら手当は付かない、あるいは付いたとしても満足のいく金額ではないというところも実はあります。医療機関により手当が付く場合は5000~10000円が一般的ですが、数万円付く場合もあります。また昇格することで役職手当が付くこともありますし、指導・相談と言った業務が増えることで日勤が増え夜勤が少なくなるなど、金銭ではなく労働条件面で待遇が良くなる事もあります。
ありがとうございます。引き続き専門看護師について教えて下さい。
専門看護師とは、困難で複雑な健康問題を抱えた人やその家族に対して、より質の高い看護を提供するための知識や技術を備えた特定の専門分野において、卓越した看護実践能力を有する看護師を言います。と言うと堅苦しい言い方なので、要は「普通の看護師よりも何らかの専門分野において長けた看護師」と言う認識でいいかと思いますが、「認定看護師」との違いが良くわからない人も多いのではと思います。具体的にはこれから説明しますが全国に1.8万人以上いる認定看護師に対し、専門看護師は数百人なのでその難易度の差はわかって頂けるかと思います。
現在、専門看護師の種類として制度化されているのは、以下の13分野です
小児看護のように「科」が特定されるものもあれば、慢性疾患看護、感染症看護、地域看護、家族支援のように、病院全体や家族、地域など広い対象に向けてケアを行うものもあります。種類は様々です。専門看護師の人数は認定看護師よりさらに少ないということはお伝えしましたが、具体的な13分野の人数は
看護協会のプレスリリースによれば以下のようになります。専門看護師総数で一番多いのが「癌看護」の専門看護師で784人になっています(※2017年データ)。次に精神看護で294人、急性・重症患者看護で251人と続きます。少ないものでいえば遺伝看護や災害看護は2016年に誕生した経緯もありますが遺伝看護は5人で災害看護は8人になります。以下種類ごとの人数です。
専門看護分野 | 新規合格者数 | 専門看護師総数 |
癌看護 | 71(人) | 784(人) |
精神看護 | 29(人) | 294(人) |
地域看護 | 2(人) | 27(人) |
老人看護 | 17(人) | 123(人) |
小児看護 | 25(人) | 210(人) |
母性看護 | 9(人) | 74(人) |
慢性疾患看護 | 19(人) | 169(人) |
急性・重症患者看護 | 27(人) | 251(人) |
感染症看護 | 10(人) | 55(人) |
家族支援 | 5(人) | 57(人) |
在宅看護 | 11(人) | 47(人) |
遺伝看護 | 5(人) | 5(人) |
災害看護 | 8(人) | 8(人) |
話続けますね。次に「専門看護師に認定される方法」についてです。専門看護師は、実務経験5年以上(3年以上は専門看護分野の経験が必要)で、看護系大学の大学院にて日本看護系大学協議会の認定を受けた教育課程を修了したのち、看護協会が認定・登録を行います。大学院によって受講できる専門看護師の種類が違いますから、どの大学院でどの専門看護師の教育課程があるは確認が必要です。専門看護師の種類によって、対応している大学院が日本に数校しかない場合もあります。また認定看護師のところでもお話しましたが、看護師の資格は一度取得したら免許をはく奪されない限り一生有効ですが、専門看護師の認定は5年毎に更新が必要になります。出産や病気など、やむを得ない理由の場合は、所定の手続きを行えば更新期間が延長されますが、ライフスタイルの変化や看護師としての将来的な働き方なども思慮に入れて取得すべきでしょう。
どの種類の専門看護師でも、専門看護師になるメリットはキャリアアップや給料アップという感じでしょうか?
専門看護師になる事の1番のメリットは、まず自分自身が看護師として専門分野に関して、より高い知識と技術をつけることができる点です。「患者さんのためにもっとできる事はないか?」「もっと自分自身を向上させ、看護の現場、医療の現場で力を発揮したい」という気持ちが強い看護師にとって、専門看護師はそれを実現させる1つの具体的方法かもしれません。
また、労働条件への反映ですが、給与に関しては、「専門看護師手当」が出る場合があります。これは医療機関によって規定が違いますので、一概には言えませんが、1-2万円程度です。その他、専門看護師手当はなくても、昇格し重要なポストに就けることによる「役職手当」として支払われたり、教育・指導・研究がしやすい勤務体制の配慮など、病院によって何らかの優遇措置が取られる事が多いです。ただしこれらは、「専門看護師を必要としている医療機関」であって、特に専門看護師でなくてもいいと言う医療機関では、一般の看護師と同じ待遇になります。そのような病院では、専門看護師の知識や技術を活かしきれない事も考えられますので、専門看護師として働く場合は、自らの力を発揮でき、しっかり評価してもらえる医療機関を選ぶ必要があります。
これだけ稀少性のある専門看護師ですから必要とされる場所が多いんでしょうし、もちろん専門看護師はそういう場所で働くのがベストですよね。あとは支援の話なんですが、やはり専門看護師の取得も認定看護師のように勤務先からの支援などあるんでしょうか?
医療機関によってはありますね。専門看護師は、大学院での修学が必須ですので、その種類の専門看護師でも一旦医療現場は離れる必要があります。この際、完全に退職し学業に専念する方法と、勤務先からの支援を受けながら通学する方法があります。医療機関によって支援内容は違いますが、金銭的、身分的な保障が受けられる事は、社会人から学生になる身には心強いものです。これは認定看護師の箇所でも説明しましたが、その「見返り」として支援を受けた看護師は、専門看護師になった後、一定期間その病院に残るという条件である事が多いです。ただ、身動きが取れない拘束感があるかもしれませんが、逆に考えると、専門看護師が必要とされる職場が約束されており、その知識と技術を、患者さん、家族、医療スタッフ、病院のために役立てる事ができる環境が整っているとも考えられます。ですから、これから専門看護師を目指す人は、専門看護師に対する需要と理解のある病院で働きながら経験を積み、準備をするのも良いと思います。認定看護師・専門看護師の資格取得支援に積極的な病院を探すには以下のエージェントを使うのがオススメですよ。
資格取得の支援に関しては大きくは認定看護師と変わらないようですね。今回の質問で認定看護師と専門看護師の違いがよくわかりました!ありがとうございました!
看護師が認定看護師・専門看護師になる方法
看護師が認定看護師・専門看護師を取得するには「通学・勉強するまとまった時間」「仕事なしでも生活していけるだけの経済力」が必要ですが、勤務する病院によっては将来の病院の先行投資として資格取得の支援を行ってくれるケースがあります。休職扱いで通学できるところ・学費を全部出してくれるところ・給料はもらえて学費は自腹など、支援の形は様々です。また認定看護師・専門看護師の種類自体もバリエーションがあります。
もし認定看護師・専門看護師になることを視野に入れている場合は、早い段階で資格取得支援制度がある医療機関へ転職することも1つの選択肢です。マイナビ看護師などの転職エージェントを見れば各病院の具体的な資格支援制度の内容をチェックできますし、何より資格を取得したあとに認定看護師・専門看護師を求めている職場で継続的に活躍するきっかけ作りが可能です。まずは具体的な病院名を看護師転職エージェントの担当者に聞いてみて、認定看護師・専門看護師になるステップを進めていきましょう。