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今や登山が若い世代にも人気ですが、そんな山で活躍する看護師がいるのをご存知ですか?話題になる「山ガール」ならぬ「山岳看護師」ともいわれます。登山好きの看護師なら、山岳看護師は好きな山登りで山岳医療の知識や技術が生かせる趣味と実益を兼ねた魅力的な仕事でしょう。今回の記事では、そんな山岳看護師について、山岳看護師になるには?という方法の紹介や、仕事内容や資格取得の概要、求人の探し方などを紹介します。

1.山岳看護師とは?山岳看護師になるには?資格取得者数は?

山岳看護師とは、山岳医学の医療や看護・技術を持って山岳領域で活動または山岳医学の研究などが実践できる看護師のことです。具体的には、登山医学・レスキュー技術・クライミング技術・遭難救助などの知識や技術が必要になります。山岳看護師になるには日本登山医学会へ入会し、「山岳看護師」もしくは「国際山岳看護師」の資格取得をすることが必須です。

それでは実際に、山岳看護師の資格取得をしている人はどのくらいいるのでしょうか。一般社団法人日本登山医学会のホームページに名簿があり、(2019年7月時点)そこでは、日本登山医学会認定の国際山岳看護師が10名、国内山岳看護師が41名掲載されています。山岳看護師の認定が始まったのは2016年6月からであり、資格としては比較的新しい資格ということができるでしょう。

2.山岳看護師になる方法を具体的に解説

上記で山岳看護師になるには「日本登山医学会へ入会し・・・」と説明しましたがもう少し詳しく紹介します。

「日本登山医学会」へ入会して「山岳看護師」か「国際山岳看護師」の資格をとって初めて山岳医学の臨床および研究活動を行うことができるのですが、そもそも「日本登山医学会」とは日本で唯一の登山医学に関する専門家の集団でもあり、医療関係者や研究者だけでなく、山岳に関わる他の職業(山岳ガイド、山岳団体関係者など)が会員として登録されています。その中で、日本登山医学会認定山岳看護師コース、認定国際山岳看護師コースで開かれる各地のクラスタに応募し、それらのクラスタを5年以内に受講し、すべてのコースを受講後に認定・実技試験を受け合格すると資格が取得できます。そのクラスタでは以下のような課題をこなしていきます。

  • 登山技術や救助技術
  • 一次救命処置(BLS)、二次救命処置(ACLS)、ICLS(日本救急医学会の蘇生トレーニングコース)、JPTEC(病院前救護)の研修
  • 夏山・冬山における高山病や凍傷などへの対処法
  • 高所生理学や登山技術の習得、雪崩の救出訓練

 

これを見ると、山岳看護師になるには、登山経験が豊富でないと資格取得が難しいのかと言えばそうでもないようです。登山の経験があまりない看護師は、ほかの山岳団体などで登山技術講習などを受けて登山技術や知識をある程度はつけておく必要がありますが相当数の登山経験がないとダメというわけではないようです。

ちなみに現在は認定制度の見直しを行っているようで、国際認定山岳看護師や国内山岳看護師のプログラムへの新しいエントリーは延期されているようです。再開は2020年3月中旬となる予定とのことです。

 

3.山岳看護師の活動内容・仕事内容は?

では、山岳看護師になるとどのような活動をするのでしょうか。以下にまとめました。

  • 山岳診療所や救護所での診療介助・健康相談
  • 健康啓蒙教室(熱中症・高山病予防・安全登山教室・遭難防止・凍傷・低体温症・脱水)など
  • 登山者の健康調査
  • 山岳レースでの救護
  • 山岳医療パトロール(遭難防止)の実施

 

これら以外にも研究活動の一つとして、登山中や山頂で休憩をする登山者たちにアンケート用紙を記入してもらったり、疲労度を測るために血液中の酸素飽和度や脈拍数も計測するなども行っています。登山中に具体や体調の悪い人がいれば、必要時付き添って行動をすることもあります。

山岳看護師といえば、やはり山岳診療所や救護所などで活動をすることを想像する人も多いでしょう。実際には、以下のような山の山小屋に各大学医学の診療所が併設されているケースもあります(参考URL)。山岳診療所では、各診療所と大学医療施設が連携しており、それぞれ大学で勤務する医師や山岳医療に関心が高い医師や看護師などが診療活動を行なっています。

  • 北アルプス:多くの山小屋に信州大学を含めて各大学医学部の診療所が併設されています。
  • 立山連峰・後立山連峰・常念山脈〜上高地・槍穂連峰・薬師・裏銀座
  • 南アルプス:北岳
  • 富士山
  • 白山

 

山岳診療所では、山岳地・高地である特殊な環境の中で山岳医療の知識や知識を持って活動を行っています。そのため山岳診療所内の医療設備も限られている中で、緊急の状況ではヘリコプターによる搬送の判断も求められ、さらに診療所に隣接する山小屋や山岳警備隊などと連携し適切な対処をすることが大切になってくるのです。

4.山岳看護師の給与は?求人の探し方は?

山岳看護師の資格を取得したら、仕事として山岳診療所ですぐに勤務することはできるのでしょうか?求人はすぐ見つかるのでしょうか?求人サイトなどを検索してみると、山岳診療所や救護所で勤務する看護師の募集は見つかりませんでした。山岳診療所で山岳医療に携わるのであれば、山岳診療所と連携をしている関連大学病院に勤めることが山岳診療所で活動できる近道かもしれません。

(参考:信州大学医学部附属病院看護部HP

このように、山岳診療所で活動するには、関連大学病院経由で携わりながら求人に出会うか、もしくは別に病院などで勤務をしながら、夏山シーズンなど山岳診療所での需要が高いときに、ボランティアなどで活動をすることが多いと考えられます。

一方で、個人として「山ナースガイド」の事務所を設立して活躍されている山岳看護師もネット上で見つけましたので、そういう働き方もありそうです。「山ナースガイド」の仕事は山岳診療所・救護所での活動、登山同行やガイド、イベント救護、遠足・学校登山の同行、安全登山の講習会などを行っているようで、基本料金は一例ですが例えば1人で登山して同行してもらう場合はシーズンやルートによりますが5万円くらいが1日の最安値のようです。

さらに、山岳看護師が登山に同行するとしても、特別な医療機器を携行したり、医療行為を行うことを前提としたものではないこと、事故などが生じた時の対応としても通常のガイド登山と同等の対応になることも明記されています。このように、山岳看護師として独立ができるチャンスがあると、将来的にも仕事の選択の幅も広がるといえるでしょう。

(補足)山岳医や山岳看護師認定の歴史

もともと国際山岳医制度は、1997年よりヨーロッパなどで国際的な山岳医学の臨床での実践や研究を行う医師を認定する制度として、スタートしています。日本でもそれらを受けて、2010年に国際山岳医と同様の資格が取得できるようになりました。しかし、国際山岳医になるためには一般教程として134.5時間が必要とされており、そのため国内で最短でも85.5時間の教程で資格が取得できる国内山岳医制度を開始となりました。

このようにもとは2010年の「山岳医」制度から始まったものが、2014年看護師も対象になります。そして、2014年度から日本登山医学会の認定山岳看護師・国内山岳看護師認定のための育成プログラムが始待ったのです。山岳看護師認定のための教程は、医師や看護師に限らず同じで、より高度な山岳医療の知識が求められています。

 

山岳看護師として活躍したい方へ

山岳看護師という資格を今回初めて知ったという人も、そうでない人も登山好きな看護師にとっては魅力的な資格であることは変わりありません。山岳医療や看護のスペシャリストとして、これまでの看護の知識や技術も生かしながら、好きな山で活動できるのは趣味と実益を兼ねた経験になります。

ただし、山岳看護師として活躍できるシーズンや場所も限られており、山岳看護師だけで収入を得ていくのは難しいと言わざるを得ません。しかし、山岳看護師として自分で独立して事務所を構えることも可能であり、今後は登山の人気や山岳医療の必要性の高まりにより、仕事の幅は増えていくことも考えられる資格といえるでしょう。