ICUは集中治療室の略称で内科系、外科系を問わず集中的に治療看護を行う場所です。ICUは元々の疾患の治療をするために設けられた施設ではなく、疾患の治療を進める過程で病状が悪化した際に一時的に患者を収容するためのものであり、集中治療の結果、生命危機を脱したら患者は元にいた病棟に戻っていくこととなります。救急搬送されてきた人や手術直後の人の他、急性膵炎等の内科系疾患でも24時間にわたって高度な管理・看護が必要な場合はICUに入室します。最近は一般病棟でも24時間重症者を監視するシステムや医療機器が普及しているので、術直後やその他の重症患者でも病棟管理することが可能なケースも増えてきています。ここではICUの看護師業務について解説します。
25歳看護師3年目です。よろしくお願いいたします。今は病床数400床の中規模総合病院で、内科病棟の看護師をしています。実は最近、ステップアップとして急性期看護や救急看護の勉強をしたいと思っていて転職も考えているのですが、その中でもICU病棟での勤務に興味があるんです。ICU病棟について色々と教えていただけませんか?
転職相談Z子さんは、ステップアップとして今の職場とは異なる分野で働いてみたいと考えているんですね。では、少しICU病棟について説明していきますね。ICUとは「Intensive Care Unit」の略で、転職Z子さんもご存知のとおり、集中治療室のことを言います。ICU病棟は、主に救急搬送されて命の危機にある患者さんや、大きな手術後の患者さんなど、より集中的に24時間体制で治療を行っていく必要のある患者さんたちを看る部署のことです。
ICU病棟は一般病棟とは異なっていて、看護体制も一般的な病棟では7:1であることに対して常に2:1になっています。つまり看護師1人に対して看れる患者さんは常に2人までという厳しい決まりがあるのです。
意外かもしれませんが、ICUでは患者が重篤な状態にあるものの、モニターで全身管理されルートキープもされているため、病棟のように予期せぬ人が急変して突然バタバタしだすという事態が以外と少ないそうです。ICU勤務は大変、キツイというイメージがあるかも知れませんが、ICUから一般病棟に異動してきたばかりの看護師が「病棟は患者さんのペースで看護師が動くのが当たり前。ICUは全身管理が目的の為、医療スタッフのペースで動くのが当たり前だった。」と昔言っていたのが印象的です。処置やケアは大体時間通りに行えるので、計画的に動けるようです。病棟で急変があったら、まずは応援の医師を呼ぶところからスタートなのでバタバタしますが、患者の病状が急変した場合や緊急での入室がある場合でも、ICUにはICU専門医がいるため、スムーズに対応できます。記録もチャート式の重症患者記録をその都度記入していくので、病棟のように申し送りの後に溜まったカルテをまとめて記入してということも実はそう多くないそうです。
へー。そうなんですね。私の働く内科病棟だと毎回日勤だと受け持ち患者さんが8人だったりするので、ICU病棟は受け持ち患者さんがそんなに少ないことには少し驚きです。
ICU病棟には24時間集中的な治療が必要な患者さんばかりだからこそ、人工呼吸器や透析、補助循環装置などを使用している場合もあるし、細かな薬剤管理や急変対応など患者さんひとりに対してより手厚い看護が必要になるからこそ、国の基準で患者さんに対する看護師の割合が定められているんです。
あと病院によってはICUをさらに診療科によって細分化し、より専門的で高度な治療・管理を行っているところも存在しています。例えばCCU(Coronary Care Unit:冠疾患集中治療室)は心臓血管系の疾患や循環器系の疾患がある重症患者を対象としたユニットで、循環器系・心臓血管系の治療に力を入れている病院に併設されていることが多くなっています。以下ICUの種類を他にも挙げておきます。
・SCU (Stroke Care Unit:脳卒中集中治療室) 脳卒中患者が対象となるケアユニット。
・SICU(Surgical Intensive Care Unit:外科系集中治療室) 全身麻酔の外科手術直後の患者が対象となるケアユニットで、回復室がより高度化したもの。
・NICU (Neonatal Intensive Care Unit:新生児集中治療室) 産婦人科に併設されており、極低出生体重児や仮死新生児などを対象としたケアユニット。
・MFICU(Maternal Fetal Intensive Care Unit:母体胎児集中治療室) ハイリスク分娩となる妊婦を対象としたケアユニット。
・PICU (Psychiatry Intensive Care Unit:精神病集中治療室) 精神科病院に設置されていて、急性期にある精神病患者を隔離する目的のものや、精神科以外の疾患の急性増悪時に患者を収容する目的のものがあります。
・PICU(Pediatric Intensive Care Unit:小児集中治療室) 救急搬送されてきた小児や難病を持つ小児を対象としたケアユニット。小児専門病院等に併設されているが、施設数自体はごくわずかです。
ICUの説明ありがとうございます。やはり一般病棟とは色々異なる点が多いですね。ICU病棟で働いてみたい気持ちは強いのですが、実は自分が本当にICU病棟で働けるかどうか不安なんです。実は私、性格は少しおっとりでテキパキ動けるタイプではないんです。それに何より今働いている内科病棟では人工呼吸器や透析機械なんて使っている患者さんを看たことがありません。
確かに、いきなり重症の患者さんを任されると思うと少し尻込みしてしまうのも無理はないですね。では転職相談Z子さんは、ICU病棟の看護師はどんな知識や技術が求められていると思いますか?
うーん。やっぱり人工呼吸器や透析、補助循環装置など医療機器の知識がしっかりないといけないですよね。
転職相談Z子さんの考えは確かに間違ってません。ICU病棟には生命の危機にある患者さんや大きな手術を終えた患者さんの状態管理が必要だからこそ、呼吸状態を安定させるために人工呼吸器を装着されている方もいれば、腎機能低下だけでなく循環動態も不安定な患者さんにCHDF(持続緩徐式血液濾過透析)を行ったり体の中の毒素を透析機械を介して取り除くPMX(エンドトキシン吸着)を行ったりすることもあります。また、大きな心臓の手術をした後や急性心筋梗塞などにより心機能が低下している患者さんにはIABP(大動脈バルンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助装置)の治療が行われることもあることもあるようです。そしてこれらの知識はしっかり身に着ける必要があるのは確かです。その他にもICU病棟に入院する患者さんは病態も疾患も多岐にわたるため、幅広い知識と技術が必要であり、常に勉強が必要な部署だと言えます。
ICU病棟で働くためには専門的な医療について継続的に勉強をしていくことは必要ですが、何も今の時点ですべてを完璧に理解しておく必要はありません。それは転職相談Z子さんだけに限らず、他の看護師さんだってICUで働き始める時はスタートラインは同じです。だからこそ、ICU病棟で業務を行うためには、高度な医療の知識を身に着けることも必要だけれども、それよりもまず第一にわからない治療や技術があればわからないままにせず、すぐに調べたり確認をとったりして間違いなく看護を提供できるようにすることが最も大切だといえます。そして、なぜこの患者さんはこの治療を受けているのか、医療機器の設定がなぜこの設定になっているのか等も関連づけて学ぶことで、より理解を深めて自分の知識と技術につなげていくことができます。そういう意味で、いま新たな知識や技術を身につけてステップアップしたい転職相談Z子さんにはICUはおすすめな部署かもしれません。またICU病棟ではよく医療機器メーカーの方を招いて使い方の勉強をしたり、医師に勉強会を開いてもらったたりと、勉強をする機会も多くあるので、そういった機会を大切にして、スキルアップを図っていくことができますよ。
そうなんですね。不安でいっぱいだった気持ちが少しだけ話を聞いて安心しました。でもやっぱりICU病棟で働くためには何か前もって勉強しておいたほうがいい知識や技術はありますか?
まずは、輸液ポンプやシリンジポンプの正しい使い方を復習しておくをおすすめします。ICU病棟では患者さんに使われる薬剤もとても微量な量を調整して使用していくので、輸液ポンプやシリンジポンプを一人の患者さんに何台も使用することがよくあります。だからこそ、使い方を忘れているならばもう一度しっかり使い方や注意事項を復習しておきましょう。また、ICUで使用される薬剤も種類がたくさんあるのでそのすべてを一度に覚えることは困難ですが、最低限、救急カートに入っているような薬剤については薬剤の作用や使用方法など細かくしっかり理解しておきましょう。また、人工呼吸器はICU病棟では最もよく使われる医療機器になります。そのため、もし苦手意識があるのであれば、基本的な用語の意味や設定について勉強しておくと安心かもしれません。
ICU病棟で働くにあたって、おすすめな資格やスキルはありますか?
ICU病棟で働きたいという気持ちがあれば、必ずしも必要な資格やスキルはありません。しかし、転職活動を行うにあたって、救急医療に関する資格やスキルを勉強しておくと転職希望先の採用担当の方にとってもよい判断材料となるため、より希望の部署で採用してもらえる可能性は高くなるかもしれません。
具体的にどのような資格やスキルがあるのか教えてください。
まずはAHA(アメリカ心臓協会)が認定するBLSヘルスケアプロバイダー資格やACLSプロバイダー資格を取得することをおすすめします。このふたつの資格はAHAの国際ガイドラインに従って学ぶ救命処置の資格であり、日本の各団体がAHAと提携し発行しているものになり、どの団体のトレーニングを受けても取得できる資格はAHA公認の同じものなります。BLSは主に一次救命処置、ACLSは二次救命処置の内容となっていますが、これらの資格を取得することで救命処置のガイドラインをしっかり学ぶことができます。AHA認定のBLSおよびACLSヘルスプロバイダー資格はICUでは患者さんが急変することも度々あり、迅速な救命処置が求められることもあります。そのため、ICU病棟で勤務する看護師さんの多くはBLSやACLSを取得している方も多いようですが、もちろんICU病棟勤務でなくても取得することができます。各団体や学会などが各地でコースを主宰しているため、興味があればインターネットなどで調べてみてください。
そうなんですね。さっそく調べてみたいと思います。この2つ以外には他にありますか?
その他には脳卒中の初期診療を標準化したISLSや外傷の初期診療のガイドラインであるJATECなどを勉強される方もいれば、また呼吸療法認定士などを取得する看護師さんもいます。それだけICU病棟に入院される患者さんの疾患や病態は様々ですので、まずは自分が興味のある内容や苦手意識のある分野から少しずつ勉強してみてはいかがでしょうか?
はい。ICU病棟で働くためにはたくさんの知識や技術が必要なことがわかりました。それだけICU病棟での業務は大変だということですね。ICU看護師として「求められる人材」ということでいえばどうなると思いますか?
上記のようにICU看護師は確かに幅広い知識や技術はICU病棟で働く上で求められます。しかし、知識や技術があるだけではICU病棟で勤務するための心構えとしてはやや不足しています。ICU病棟での業務は、患者さんの命に直結する場面がたくさんあります。そのため、小さなミスやヒューマンエラーひとつをとっても大きな問題に繋がりますし、患者さんの命に影響することだってあります。そのため、ICU病棟で働くにあたり、日々の業務は正確に行っていく必要があります。薬剤の管理や医療機器の設定など多くの業務は看護師2名以上でダブルチェックを行い、記録に残すなどヒューマンエラーを防ぐために病院ごとで様々な工夫がされています。そのため、大切なことは各病院で定められているマニュアルやルールを遵守し、業務を行えるかということです。また、様々な疾患や病態の患者さんが多く入院する部署だからこそ、患者さんの状態も刻一刻と常に変化し、その変化に合わせて治療や看護を行っていく必要がありますので、常に報告、連絡、相談を確実に行い、チーム間で患者さんの状態を共有できるようなチームワークが発揮できる人材が求められます。
やはり仕事をミスすることなく報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を欠かさずテキパキと働けるような看護師がICU病棟では求められるんですね。患者さんが重篤というのもありますしいわゆるコミュニケーション能力というのはあんまり問われないのかな?
一概にはそうとは言えません。ICU病棟での業務となると、高度な医療処置や業務が多いためそのようにも思えますが、実際には看護師は患者さんと寄り添う時間も多くあり、患者さんとのコミュニケーションスキルも求められます。ICU病棟に入院される患者さんは、緊急入院や緊急手術、また体に侵襲の大きい長時間にわたる手術後など、入院前の自分とは異なる姿や状態でICU病棟に入院されます。そして、今後の治療や入院生活に対する恐怖や入院前のもとの生活に戻ることができるのかという不安、ICU病棟という閉鎖的な空間に長期間滞在することや、医療機器に囲まれ自由に動くとこのできないストレスからせん妄状態になるなど、身体的だけでなく精神的にも大きなダメージを受けている方が多いです。
ですので精神面のケアも含めてコミュニケーション能力は求められる場面が多いです。また患者さんの中には疾患や挿管中などの医療処置によって自分の意思を声や身振り手振りで表現することが困難な方もみえます。そのため、ICU病棟の看護師は、患者さんが少しでも快適に過ごせるような工夫をしたり、少しでもその人らしく入院生活が送れるように配慮をしたりと、入院環境を整える役割を担っています。時に寄り添い、患者さんの話を聞いたり、必要に応じて患者さんの不安を解消できるように医師やその他医療スタッフとの橋渡し的な役割も担っているため、ICU病棟の看護師は患者さんにとって最も身近な存在であるといえます。だからこそ、患者さんの気持ちに寄り添えるコミュニケーションスキルをもつことも求められるスキルといえます。
なるほど、全員が意識がないわけではないですし当然ですよね。患者さんのご家族との関わりも非常に重要だと思いますがその辺はいかがでしょうか?
もちろん大切です。とくに救急搬送されたり、状態が急変してICU病棟へ入院することになった患者さんのご家族は、患者さんが現在おかれている状態を受け止めきれずにいることもあります。また、そのような心の準備ができていない状態にも関わらず、患者さんの治療のために医師から家族に多くの説明があったり、同意書に何度もサインをしたりと、ご家族にとっても精神的にも肉体的にも大きな負担となる場合が多いです。
そのため、ICU病棟の看護師は患者さんだけでなく、患者さんのご家族に対してもしっかりとフォローをしていく必要があります。とくに切迫した状況であればあるほど医療処置や手術内容についての説明を患者さんのご家族はしっかり理解できないままに言われるがまま同意書にサインをし、ご家族へのフォローは後回しになり医療処置が優先されてしまうこともごくまれにあります。そのため、必ずICU病棟の看護師は医師から患者さんやご家族へのインフォームドコンセントの際には立ち合い、疑問点は不安な点はないか確認したり、時に患者さんのご家族の代弁者として、医師と患者さんのご家族との橋渡しをします。
また、ICU病棟はご家族でも面会時間の制限があり、自由に面会をすることはできません。そのため、面会に来られた際には限られた時間の中で患者さんとご家族が気持ちよく過ごせるように環境を整えたり、患者さんの状態や日々の変化など、看護師から家族にお伝えできることはお伝えしてご家族が面会できなかった間でも患者さんの状態をご家族が把握できるような声掛けをすることもあり、患者さんだけでなく、患者さんのご家族への配慮も求められます。
ICU病棟での業務は医療行為に眼を向けがちでしたが、キャリ姉さんの話を聞いて人と人との関わりがとても大切なことがわかりました。
キャリ姉さんの話を聞いて、ICU病棟で働いてみたいという気持ちがますます強くなりました。でも、看護師の経験自体まだたったの3年だし、転職の経験が私にはないので転職すること自体が不安です。
早期の退職はそんなに気にしないでいいと思います。
看護職員の医療労働実態調査の報告によると、ひとつの病院での勤続年数は「1年未満」でも9.3%いますし「5年未満」でいうと37.9%で約4割を占めています。転職相談Z子さんの3年未満だと「25.2%」になります。4人に一人は同じくらいのキャリアで転職していると思うと安心できませんか?これは、結婚、妊娠、出産などの女性のライフスタイルの変化の影響もありますが、それ以外にも病院の勤務体制や労働環境の不満や自身のステップアップのためなど要因も様々であり、看護業界において自分のライフスタイルや考えに沿った転職は当たり前の時代であるといえます。
勤続年数 | 離職率 |
1年未満 | 9.3% |
1~3年未満 | 15.9% |
3~5年未満 | 12.7% |
5~10年未満 | 20.0% |
10~15年未満 | 13.0% |
15~20年未満 | 9.5% |
20~25年未満 | 8.4% |
25~30年未満 | 5.0% |
30年以上 | 5.7% |
勤続年数が5年未満以下の人が4割もいることに驚きです。でもそれだけ多くの看護師さんが現在の職場を離れていたり、転職したりしている人がいるってことですね。ステップアップを目的に新たな病院へ転職される方も多いんですかね。今では看護師向けの転職情報サイトも多く、多くの看護師さんがより自分にあった職場を探していますよね。少し転職について前向きな気持ちになれました。キャリ姉さん、ICU看護師へ転職することでメリットやデメリットがあったら改めてここでまとめてほしいのですが。
メリットからまとめてみますね。
まずICU病棟に転職する看護師の最大のメリットは、転職相談Z子さんのように看護師としてステップアップしたいと考えている方にとって、救急看護、急性期看護をしっかり学ぶことができる部署である点です。ICU病棟は脳血管疾患、心臓疾患、消化器系疾患など全身におよぶ疾患の治療が対象になるため、幅広く看護を学ぶことができます。また、患者さんの全身管理を行う部署であるからこそ、薬剤についての知識や、体内水分バランスの変化、バイタルサインの変化、心電図モニターの変化など患者さんの異常に対してすぐに気づくことができる観察力を身に着けることができます。それに関連して
「医療機器に強くなれる」というのもメリットです。ICUでは一般病棟では使用頻度の少ない高度な医療機器にふれる機会が多いため、医療機器の知識や技術をしっかりと身に着けることができます。そのためICU病棟での勤務を経験したことで、のちに一般病棟へ異動となった際でも戸惑いなく医療機器を使用することができ、慣れていないことによるヒヤリハットを防ぐことができます。
他のメリットでは「2:1看護で1人の患者さんにより丁寧に接することができる」という点もあります。ICU病棟では看護体制が常時2:1となるため、1日に受け持つ患者さんの数は1人ないし2人になります。医療処置や看護ケアは多いものの、受け持ち当日は常にその患者さんのみを受け持つことになるため、患者さんの変化にも気づきやすく、また患者さんにしっかりと寄り添った看護を提供しやすいです。そして、一般病棟ではなかなか時間の取りにくい足浴や手浴などの患者さんにとってリラクゼーションを提供できる看護もICU病棟で患者さんの状態に合わせながら工夫し、しっかりと行うこともできます。
あとは「再転職時や部署異動時も即戦力として期待される」という点も挙げられます。ICU病棟での業務は一般病棟への異動や再転職時など、どこの部門でも求められる知識と技術になります。そして患者さんの急変時対応や急性期治療に強くなるため、他部署への異動時や再転職時にも即戦力として期待されたり、転職に有利になることもあります。また医師とも患者さんの治療に関して細かく情報共有をしたり、患者さんの変化について話し合いをする機会が多いため、医師との信頼関係も築きやすいです。
こうやってみるとICU看護師勤務のメリット多いですね。あ、ちなみに年収面でもICUの看護師はメリットがあるんでしょうか?
うーん、これはICU勤務だから給料が高いということではないですが、病院によっては「危険手当」や「特殊勤務手当」といった一般病棟ではつかない手当がつくともあります。危険手当や特殊勤務手当は放射線被ばくの可能性が高くなることや、患者さんの血液や体液など触れることが多く感染リスクが一般病棟より高いなどのケースで発生します。危険手当や特殊手当は各病院の規定によって異なるため手当の金額は各病院によって差がありますが、危険手当や特殊勤務手当が出れば収入に差がでてくると言えます。
あんまり聞きたくないですが逆にICU病棟に転職することのデメリットはなんでしょうか?
1つは
勉強が大変という点でしょうか。ICU病棟は患者さんの全身状態を把握するために多くの病態や疾患を理解する必要があったり、最先端の医療機器を使用する機会も多いため、常に勉強が必要になります。そのため、勤務時間だけでなく、わからないことは勤務終了後も自分で調べて学んでいくという姿勢が必要になります。時に休日には自分の苦手な分野についてセミナーなどの勉強会に足を運び、自主学習をする看護師も少なくありません。自ら学ぶ姿勢を常にもっていないと患者さんの命に直接的にかかわる部署であるため、勉強の意欲が低い方にとってはつらい部署になってしまいます。
またICU病棟での勤務は正社員での雇用の場合が多いです。中にはパート勤務でICU病棟で業務を行うことができる病院もあるかもしれませんが、基本的には患者さんを受け持ち、ICUで直接的に責任のある看護業務を行うのは正社員であるといえます。そのため、夜勤業務も行う必要があるほか、ときに患者さんの急変などにより時間外労働が発生した際もしっかりと行う必要があるため、必ず定時で業務を終えたい人や夜勤業務を行うことができない人は厳しいかもしれません。