現在40代~60代の看護師さんの皆さんは、がむしゃらに働いてきた中で気が付けば後輩がたくさんでき、さらに現在は管理職などの重要な役職についている人も多いでしょう。あるいは、もしかしたら、ある年齢で現役を退き、復職の機会を探っている方もいらっしゃるかもしれません。今回はそんな中高年にあたる看護師さんの転職・復職を成功に導くためのポイントをご紹介いたします。年齢や経験を積み重ねたからこそマッチする職場がありますので、ご参考にしてください。
私は都内の大学病院に勤務をしている49歳の看護師です。現在は救急部の師長をしています。実は地方に住む義理の母の介護が必要な状況になって、今後の働き方をどうしようか悩んでいます。一度離職して、落ち着いてからどこかで看護師として復職するか、もう少し融通の利く新しい職場に転職して働き続けるか、どちらが良いのかと考えています。どのような職場を選べば良いか教えていただけないでしょうか。
救急部の師長さんをされているとは、現役バリバリの看護師さんですね。たくさんの場数を経験して、重要なポジションにいらっしゃるんだと思います。お義母様の介護が必要ということで、きっと看護師という職業柄精一杯つくしたいとお考えなのではないでしょうか。
一度現場を離れて再就職するか、形を変えて働き続けるか、悩ましいところですよね。それぞれに特徴やメリットなどがありますので、その説明をする前にまずは同じ年代の看護師さんの就業状況について共有させてください。
まず実際に年代別にどのくらいの看護師が就業しているのかを確認するために、厚生労働省が行った「就業看護師の年齢階級別年次推移調査」を見てみましょう。まずは全体的に就業人数は右肩上がりになっています。そして、ここでも注目なのが、特に40代~60代前半までの就業率については、年々増加していることが伺えることと、平成28年のデータに関して言えば、25歳~39歳までの数と、40歳~65歳以上の数がほぼ半々という結果になっているのが見てとれます。意外かもしれませんが、中高年世代にあたる40~60歳代の看護師さんたちは、実際に現場で活躍する人数も年々増加しているのです。R子さんのように40代を超えていても現役で活躍する看護師は多いのです。
何だか希望が持てるデータですね!私たち中高年になると、どうしても先行きを不安に思うことがあるので、活躍している同士が多くいると思えるだけでも、何か頑張ろうという気になります。
そうですね、経験を積んだ方たちの活躍は現場でもきっと貴重なものだと思います。以下では中高年の復職・転職のおすすめ事例を紹介していきますが、一度ブランクを持つケースと、そのまま転職するケースで分類して説明しますね。
まずは、一度離職した方向けの情報からお届けしたいと思います。一つ目は「介護系単発業務」のお仕事で、具体的にはデイサービスや訪問入浴、介護福祉施設の単発業務です。ブランクの期間にもよりますが、おススメする大きな理由として、どの業務も医療行為が少ないという点があります。ブランクがある看護師が復職時に最も不安を感じるのが「医療技術や知識の遅れ」についてだと思いますので、できる限り医療行為の少ない業務から始めることで、自信や感覚を取り戻すことができると思います。さらに、単発業務の良い点として、一回ごとの勤務になるので、自分の好きな時に勤務日を設定できることから、気軽に始めることができます。例えば、まずは一度業務を行ってみて、様子がつかめたら、週1回のペース、週2回…というように自分で調整しながら増やすことができるわけです。いきなり職場に就職してしまうと、このように自由に調整することは難しいですよね。急な変化で長続きしないかもしれません。
確かに、一旦仕事から離れて完全に復帰できるかどうか自信がないときに、自分でペースを調整できるのはありがたいですよね。仕事探しは転職サイトですよね?
今はそうですね。単発業務に限らず、転職や復職の際には転職サイトに登録して見つけることが効率の良い探し方です。全国の求人を一括で検索できる看護師専門の転職サイトがありますので、そちらに登録して、希望にあった条件の職場を探してみてください。さらに、転職サイトには専門のアドバイザーがいますので、不安なことは直接相談しながら進められるので、ぜひ活用してみてくださいね。また、単発業務に限っては、運営企業によって、業務方針や運営に色が出ますので、ご自分にあった職場を探すために、いくつか別の施設で業務を行うこともおススメしたいところです。
次におススメするのが、訪問看護業務です。ご承知のとおり、高齢化に伴って、地域連携が重要視され、在宅医療・介護の拡大が推進されています。そのため、訪問看護師の不足が問題になってきています。そこで、ブランクのある中高年の看護師の方の出番です!訪問看護というのは、病院のように治療が終われば退院というものではなく、生活の中で治療を継続させるものです。そのため疾患に注目するだけでなく、利用者さんの生活を通したケアが重要になってくることから、人生経験を積んだ中高年の看護師だからこそできるケアが求められているのです。
そう言われると自分がその視点を持っているか疑問に思うところはありますが、少なくとも人生経験分の思慮深さは持っている自信はあります。そういう強みを活かすということですね。
そういうことです。
年代別の強みというのがありますので、その時々で上手く活かしていくということですね。また、訪問看護分野は経験がないからイメージが沸かないという方も心配の必要はありません!担い手を増やすために、日本看護協会が専門ページを作るなど
サポート体制が万全です(※
日本看護協会・訪問看護ページ)。
初めての方でも安心して業務ができるようになっていますので、新しい分野であっても挑戦しやすいという点を覚えておいてください。
そして、実はおススメする最大のポイントは別にあります。それは給与が高めに設定されている点です。これは日本看護協会が公表している平成25年の実際の求人データですが、月給の平均値で一番高額の257,779円(500床以上の病院)についで、2位が255,207円(訪問看護)となっています。年齢や経験別などになっていないため、あくまでも平均値ですが、それでも一般的な病院施設等の求人よりも高額な設定になっています。金額だけで職場を選ぶことはできませんが、魅力的な条件ではないでしょうか。その反面、訪問看護ならではの夜勤業務が発生したり、緊急時の対応が求められる場合もありますので、ご自分にあった条件をよく検討してみてください。
R子さんは現在現役の看護師さんなので、そのまま転職することを選択した場合におススメな転職先についてご紹介していきますね。まずは、「小規模病院」への転職についてです。現在は大学病院にご勤務されているということで、かなり規模の大きい施設の部類に入りますが、転職先はそれよりも規模の小さい病院をおススメしたいと思います。それも、これまでの経験を活かせるような管理職の求人です。現在は師長としてご活躍されていますので、さらに上の看護部長への就職を探すのが良いと思います。その理由はいくつかありますが、まずは大きな組織の中で働いた経験を活かせる点がポイントです。看護部長になることで看護部全体のマネジメントが行えますし、管理職としてさらなるステップアップにもつながります。激務度としても大学病院よりも下がる傾向にあります。
師長の経験しかない中で、部長クラスというのはかなり自信がないのですが。。。
そう思いますよね。しかし、そこは小規模な病院ですので心配はいりません。現在R子さんが病棟をまとめたりする業務とあまり変わらない内容であることがほとんどです。具体的には、病棟のリーダー職や、主任をまとめる役割とあまり変わらない規模になると考えてください。師長を経験していない方が、小規模病院の看護部長になることはあまりお勧めしませんが、R子さんのように管理職の経験がある方であれば、マネジメントのスキルアップを図るためにも向いている職場だと思います。また、大学病院のような大規模な職場では、個人の判断よりも組織や派閥などのしがらみが優先されることが多く、自由に看護の醍醐味を味わうことができない場合も多いですよね。その点も小規模な病院であれば、管理職に就くことで、やりたかった看護ができる可能性が広がります。これまで現役で経験を積んできた方だからこそ、さらなる高みを目指したいという方にお勧めの職場です。
そうなんですよね、やっぱりここまでやってきたから、ステップアップをしてキャリアを積み上げたい気持ちは正直あります。
当然のことだと思います。それに、夜勤等もなくなり現場よりも、事務的な業務が多くなりますので、時間の調整もしやすいと思います。お義母様のケアに時間を費やすことも可能ではないでしょうか。ただ、現場が好きな方には向いていないかもしれませんね。あくまでも管理職という立場ですので、患者さんに向き合うよりも、職員に向き合う時間の方が圧倒的に多くなることは覚悟が必要です。求人情報の中には、現場で働きながら管理職をするようなさらに小規模な施設もあると思いますので、まずは転職エージェントにどのような募集要項が出ているのか相談してみるのが良いかもしれません。
病院勤務を長い間行っていると、介護の現場で働くことはあまりイメージしないかもしれませんが、いかがでしょうか?
そうですね、転職先も病院施設を中心に考えていました。それに、病院勤務の経験しかない場合、介護系の職場で採用してもらえるのか少し不安ですね。
分野も異なることから、そういった心配はありますよね。しかし、
病院で積んできた経験は介護施設でもとても役立ちますので、オススメの転職先です。例えば介護度の高い利用者さんの栄養状態や運動機能のアセスメントや、褥瘡ケア、口腔ケアなど、病院でも行っていましたが、治療の一環として短時間の関りで終わることがほとんどではないでしょうか。しかし、介護の現場では、その
ケアが生活の質を上げるものとして重要な位置を閉めます。そのため、病院で行った内容よりも時間をかけてじっくりとかかわることができますので、本来のケアとその効果を実感しやすく、やりがいを感じやすいです。
しかし、一口に福祉介護施設と言っても、実に多くの種類があるため、転職を成功させる秘訣として、その介護施設の特性をしっかり見極めることですが重要です。具体的に例をあげますと、ほとんど医療行為の必要ない方が入所していて、医療よりもホテルのようなサービスを提供することを重視している施設もあれば、介護度が非常に高く、医療行為も頻回に行う必要があるような方が入所している施設もあります。この二つだけど比べても、求められるケアが異なることが容易に想像つくと思います。このように、施設や入所している方の特性をしっかり押さえておくことで、思っていたのと違う業務だとならないために大切です。せっかく転職を決めたのに、想像と違う業務で合った場合では楽しく働けませんので、求人情報を収集することと、それでも十分な情報がない場合には転職エージェントの方に、希望する業務等を伝え、条件に合った職場を探してもらうことが良いでしょう。
入所している人の介護度って、その時々で違うでしょうから、情報収集も難しそうですね。
100%ピタリと状況を把握することは無理かもしれませんが、施設ごとにある程度の介護度別の受け入れ方針を持っていますので、おおよその状態はわかると思います。また、施設によっては単発業務を行える場合もありますので、不安な方はお試しで一日働いてみるのも良いかもしれませんね。自分の目で見たものが一番信頼できますから。
これも近年注目を集めている職場の一つですが、
緩和ケア施設も候補の1つです。ここでは主に終末期医療に関する施設への転職についてご紹介いたします。国立がん研究センターによれば、患者さんを「がんの患者さん」と病気の側からとらえるのではなく、「その人らしさ」を大切にし、身体的・精神的・社会的・スピリチュアル(霊的)な苦痛について、つらさを和らげる医療やケアを積極的に行い、患者さんと家族の社会生活を含めて支えることを緩和ケアを定義しています。
一般的に看護師の経験を積んでいる人であれば誰でも、患者の精神面を支えることも看護の一つであると理解していると思いますが、緩和ケアにおいては、看護師自らの考え方、特に死生観がとても重要になってきます。それは治癒に向かって一緒に歩いていく看護ではなく、死に向かう人を支える看護を行うからです。死生観を確立することは経験の浅い看護師には難しく、患者の生死に多く関わってきた看護師だから持ち合わせているものだと思います。いくら経験を積んでも、決して安易に行える業務ではありませんが、積んできた経験を元に「その人らしさ」を引き出す職場へ挑戦する選択肢もあります。
病院で働いていると、終末期の患者さんを担当することが多くあります。でも、専門的な施設ではなかったり、忙しかったりすることから、十分に関わりが持てない現状に悔しい思いをしている看護師は多いと思います。もっと一人ひとりにきちんと向き合って、納得のいく看護がしたいと思っている人はとても多いはずです。
そうですよね、時間に追われて十分やりたい看護ができないと思っている方は多いと思います。そんな方はぜひ緩和ケアに転職することをお勧めしたいと思いますが、転職を成功させるために大切なポイントがあるのですが、何だかわかりますか?
何だろう?研修をしっかり受けてから就職するとかでしょうか?
確かに、転職前に緩和ケアの勉強会などに参加するのはとても良いことだと思います。きっとその勉強会の中でも触れられていることだと思いますが、自分なりの死生観を持つことと同じくらい宗教観が大事になってくるんです。R子さん自身で何か信仰している宗教を持つべきということではありません。終末期を迎える方の中には、心のよりどころとして信仰心を大切にされる場合があります。そんな場面に遭遇した時は、その人を尊重し受け入れる心の余裕が必要ということを心に留めておいてください。そのくらい、その人らしさを受けいれて、受け止めるという器が必要な職場なので、そういったことが自分の性格にあっているかという点を見極めておくことが大切です!
おっしゃる通りですね。今回頂いたアドバイスを参考に今後の身の振り方を柔軟に検討したいと思います。
中高年看護師の転職・復職を成功させるためのポイント
中高年看護師さんの特徴として、「十分な看護師経験を積んでいる」ことが強みになります。経験という貴重なセールスポイントを武器に新しい職場への売り込みをしましょう。その際に、これからの無限の可能性を試す新人さんのような視点ではなく、今持っているスキルを活かせる職場という視点を持って職場を探すことが成功の鍵です。ご自分一人で強みを活かした就職活動は難しいと思いますので、転職エージェントのプロに、これまでのご経歴や、今後の展望などを率直にご相談するのが良いと思います。いくつになっても輝けるのが、看護師という職業の魅力ですので、その時々で一番合った自分なりの職場が見つけましょう!
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