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診療情報管理士は、診療録や医療情報の管理、データの加工や抽出・分析による有効活用など医療情報を扱うプロとして、医療の質向上や病院経営に携わる職種です。診療情報管理士の資格取得にはいくつかの方法がありますが、看護師免許等の医療資格を保有していると、資格取得が有利になります。そこで今回は、診療情報管理士の資格取得や仕事内容、看護師にはどのようなメリットがあるのか徹底解説します。

1.診療情報管理士とは?

診療情報管理士とは、その名称通り、診療情報を管理する職種です。四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)と医療研修推進財団で認定された資格で、2019年5月時点での認定者数は約3万7000人になります。診療情報管理士は、国際統計分類等に基づいて診療情報の管理を行うとともに、データの抽出や分析・加工をし、ニーズに適した情報の提供、病院経営に寄与する役割を担っており、大変専門性が高い職種です。診療報酬において「診療録管理体制加算」やDPC病院での「データ提出加算」等に関与します。

例えば、診療録管理体制加算では、年間の退院患者実数2000人につき1人以上は専従者が必要になります。専任は他の業務との兼任が可能ですが、専従は兼務ができず診療情報管理の業務のみを行わなければなりません。専従者は、必ずしも診療情報管理士ではなくても良いのですが、仕事内容が専門性に富んでいるため、診療情報管理のエキスパートである診療情報管理士の豊富なスキルが必要とされます。このように診療報酬の加算要件があるため、病院経営の面から見ても有意義な職種であると言えます。

2.診療情報管理士の資格取得方法は?看護師が取得するメリットは?

診療情報管理士の資格を取得するには、日本病院会で指定された大学や専門学校へ進学するか、通信教育を受講し、毎年2月に実施されている認定試験を受験します。通信教育の場合、通常は、基礎課程1年+専門課程1年、計2年の受講が必要ですが、医師や看護師、薬剤師等の医療資格保有者は基礎課程は免除されるので、専門課程1年のみの受講でよいのです(看護師が取得するメリットについては後述でまとめあり)。受講期間が通常の半分の1年なので、受講料についても2年間で22万円のところ専門課程に編入すると半分の11万円になります。

また、認定試験は基礎課程と専門課程それぞれに試験がありますが、医療資格保有者は基礎課程分野が免除され専門課程の範囲のみの受験です。看護師などの医療資格保有者が免除されるのは、通信教育受講に加え、受講料、さらには認定試験も専門課程の範囲のみとなり、一般の方よりもかなり有利になります。

たとえ看護師の経験があっても、基礎課程からの受講となると、やはり通信教育や試験対策の勉強をしなければならないので、負担は大きくなってしまいます。基礎課程の分野の知識は持っているはずではありますが、試験対策を何もしないまま受験という程、甘い試験ではありません。ですので、一般の受講者の方々よりも随分負担が少なくなり、有利です。一応「看護師が診療情報管理士を取得するメリット」を一例としてまとめておきます。

<看護師が診療情報管理士を取得するメリット>

①通信教育による資格取得が、一般の方の半分でよい
看護師のみに言えることではありませんが、働きながらの資格取得となると、勉強時間を確保しにくくなります。家庭があったり子育て中だと、なおさら勉強する際の負担が大きくなってしまいがちです。その点、看護師は、通信教育、受講料、認定試験ともに、基礎課程が免除され専門課程のみでよいので、勉強する範囲も狭く負担が少なくなり有利になります。

②看護師の知識・経験を活かせる
カルテを読み病名を管理するにあたり、看護師の知識や経験があると、より深く病態や疾患を理解できるため、業務の精度を上げることが可能です。業務の内容としてシナジーがあるというのは看護師の資格ならではです。

③求人探しや転職に役立つ
看護師のスキルアップとして認定看護師や専門看護師をイメージする方もいますが診療情報管理士もスキルアップの1つとして一定の評価はもらえるでしょう。転職や求人探しの時は勉強に対する姿勢や向上心なども見られますので診療情報管理士の資格があれば求人探しなどにも活きてくるでしょう。

3.診療情報管理士の試験の難易度は?合格率などを紹介

上記のように看護師にとって資格の取得にアドバンテージがあって求人探しや転職にも好影響がある診療情報管理士の資格ですが難易度はどれくらいでしょうか?1つの目安として日本病院会から毎年の合格者数や合格率が発表されていますのでご紹介します。過去5年間の合格率の推移を見てみましょう。

平成30年度 52.4%(受験者総数3044名 合格者数1594名)

http://www.jha-e.com/top/pages/cert12

平成29年度 66.3%(受験者総数3868名 合格者数2564名)

http://www.jha-e.com/top/pages/cert11

平成28年度 44.5%(受験者総数3775名 合格者数1678名)

http://www.jha-e.com/top/pages/cert10

平成27年度 53.1%(受験者総数3992名 合格者数2118名)

http://www.jha-e.com/top/pages/cert9

平成26年度 49.8%(受験者総数3777名 合格者数1881名)

http://www.jha-e.com/top/pages/cert8

このように、合格率は50%前後で推移していることが分かります。なかなかの難関試験です。職種別の合格率は公式には発表されていませんが、看護師等の医療資格保有者だともう少し上がる、とスクーリング時の講師のツイートなども見かけます。また、一般の受験者でも、通信教育よりも大学や専門学校で教育を受けた人のほうが合格率が高くなる傾向にあるようです。

4.看護師が診療情報管理士を取得したあとの仕事内容は?

資格は取得して終了ではありません。実務が待っています。診療情報管理士は、中央病歴管理室(医療情報部、など病院によって部署名は様々です)に配属されることが多く、仕事内容は多岐にわたりますので一例ということでご紹介します。

1)診療録(カルテ)の管理

紙カルテの病院では、診療情報は紙運用が基本となるため、外来カルテ・入院カルテの製本やカルテ庫等の保管場所での管理を行います。電子カルテを導入している病院は、診療情報は電子で運用するので基本的に紙は発生しません。しかし、他院からの診療情報提供書や、患者さん・ご家族の同意のサインが必要な入院診療計画書や検査・手術の同意書等、電子カルテとはいえ重要な紙の書類が発生します。そのため、電子カルテとは別に、これらの紙の管理が必要になります。

また、医師が作成する退院時要約は、退院後14日以内に9割以上の件数を完成させることが、診療録管理体制加算の要件のひとつになっています。要件を満たすために、退院時要約の作成が遅れている医師への督促を行うことも重要な役割です。

2)監査

カルテに必要な内容が適切に記載されているか、必要な書類が揃っているか、記載漏れや不備がないか等、質的監査・量的監査を行います。カルテには、標準的な日本語で誰が読んでも分かりやすい記載が求められます。とはいえ、英語や略語で記載する医師はいまだ多く、中には非常に分かりにくいカルテ内容が多いのが現状です。電子カルテの病院が多くなっているとはいえ、紙カルテの病院では手書きのカルテなので、医師の癖字などは判読するのも一苦労になってしまいます。

看護師の経験があると、普段からカルテを読む機会が多く医療行為や用語などに精通しているため、カルテの内容を理解して読むことが容易ですし、より精度の高い監査につなげることが可能です。

3)DPC業務

DPC対象病院の場合、国際統計分類(ICD-10)に基づいた適切なコーディングによる病名の登録、DPC病名の決定・精査、厚生労働省への提出データ作成を行います。主治医が決定するDPC病名の精査、または病院によっては診療情報管理士が付けたDPC病名を主治医が確認するという形もあり、いずれにしても、DPC病名を決定するためにカルテを読み解くスキルが必要になります。

看護師の経験で得たカルテを読み解く力を発揮できる業務ですし、疾患や病態を理解している看護師だからこそ、適切なDPC病名の付与に活かしやすいといえます。

4)統計業務

あらゆる診療情報を管理しているので、これらの情報をデータ化し、抽出・分析・加工を行います。疾病統計や手術統計等、必要なデータを統計としてまとめたり、病院経営や教育、研究等へ二次利用できるように、ニーズに合わせたデータ抽出や加工を他部門のスタッフから依頼されることもよくあります。エクセルを駆使してデータと向き合うので、パソコンやエクセルの知識が必要になる緻密な作業です。

5)カルテ開示

患者さんや裁判所等からカルテ開示の求めがあった時に、所定の手続きに則ってカルテ開示や情報提供を行います。その際には、診療情報提供に関する指針や個人情報保護法を遵守しなければいけないので、これらに熟知している必要があります。

6)各種委員会業務

データ提出加算を取得している病院であれば、施設基準に「適切なコーディングに関する委員会」の設置、開催が施設基準としての要件になっています。他にも、個人情報保護に関する委員会や、カルテの管理に関する委員会、システムセキュリティに関する委員会等、様々な委員会の責任部署、事務局として委員会運営を行います。診療情報管理士・看護師それぞれの視点を持ち合わせているので、多職種が参加する委員会業務では、多角的な広い視野を持って連携を図りやすくなるでしょう。

7)他

これら以外にも、がん登録や個人情報保護、情報システムセキュリティ管理等の仕事内容があります。診療情報管理士や診療録管理部門が担当したり、他の部門に分けられていたり、病院の方針や特色によって様々です。

 

診療情報管理士を取得したい看護師の方へ

診療情報管理士の資格取得や仕事内容について、看護師が資格取得した場合の有利な面などをご紹介しました。診療情報管理士を取得すれば看護師としても幅が広がりますし求人を探したりいざ転職する時にもプラスに働きます。看護師が診療情報管理士の資格を取得する際には、なんといっても医療知識や現場での経験が豊富であることが強みになりますので、看護師の強みを活かし、スキルの高い診療情報管理士として活躍して下さい。「患者さんと接するのが苦手・・・」という看護師さんなどは、診療情報管理士として働けば、患者さんと接する機会は、カルテ開示等診療情報の提供の時くらいで、ほとんどありませんのでキャリアが開けるかもしれません!