目次
1.整形外科とは?どんな年齢層の患者が多いか?
整形外科は骨、軟骨、筋肉、靭帯、神経などの疾病・外傷を対象としており、新生児から高齢者まですべての年齢が対象となります。病院=高齢者というイメージは整形外科にはあてはまりません。外来・入院患者数、手術件数も診療科の中でも特に多く、整形外科が設置されている一般病院の数も内科・リハビリテーション科についで多い第3位です。高齢化が加速するいま、整形外科に対する社会的需要は高まってきており、それと同時に整形外科病棟で働く看護師にも注目が集まっています。今回はそんな整形外科病棟の看護師について、徹底的に解説していきます。
2.整形外科の専門分野の分類は?病棟で多い疾患は?
■整形一般
整形疾患全般を主に対象とする。クリニックや個人病院に多い。
■脊椎・脊髄
脊椎・脊髄の疾患を対象とする。主に腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱狭窄症、頸髄症といった脊髄の圧迫障害に対する除圧術や脊柱変形に対する矯正固定術を行う。
■関節
股関節や膝関節、肩関節が対象となる。股関節や膝関節の変形性関節症などの関節性疾患に対しては人工関節全置換術や骨切り術、大腿骨頚部骨折に対しては人工骨董置換術などの手術が行われる。膝関節、肩関節では関節鏡を用いた靭帯再建術や半月板縫合、切除術、腱修復術等が行われる。
■手
手の疾患や外傷の治療を対象とする。整形外科の中でも非常に繊細で難しい。マイクロサージャリーを応用した微小血管や神経縫合などを行う。
■足
小児では先天性内反足、成人では外反母趾や麻痺足が主な治療の対象。保存的治療(ギプス・装具固定)も多く行う。
■骨・軟部腫瘍
骨肉種などの骨・軟部腫瘍の治療が対象。悪性腫瘍に対しては、手術だけでなく化学療法も重要な治療手段となる。
■関節リウマチ
関節リウマチを対象とし、人工関節全置換術、関節形成術、関節固定術のみならず薬物療法も重要になる。
■スポーツ整形
スポーツによる外傷や障害を対象とする。前十字・後十字靭帯断裂、半月板損傷などの疾患が多く、靭帯再建術や半月板縫合・切除術が行われる。
■骨代謝・骨粗鬆
骨粗鬆症や骨軟化症などの代謝性骨疾患が対象となる。主に薬物療法が中心。
ただし、これはあくまで参考程度という感じです。先ほどもいったように、整形外科病棟といっても、病院ごとに対象となる専門分野があり、その性質は大きく違います。専門分野が違えば、対象となる患者の年代や疾患、手術方法、リハビリテーション方法なども大きく変わってくるので、そこで働く看護師にもそれに準じた看護が求められるようになります。整形外科病棟の看護師に転職する際には、その病院がどんな分野に力を入れているかあらかじめリサーチし、その分野に応じた知識や看護技術を学ぶ必要があるでしょう。
3.整形外科病棟の看護師に求められる知識や看護技術は?
■術前術後管理
まず術前術後管理については必須です。術前の全身状態のリスク評価から、術後の創部観察、ドレーンの種類や管理方法などの知識は必要になってきます。整形外科病棟は手術件数が多く、手術日は非常に多忙です。入退院も多いので、様々な業務をこなしながら術前術後の患者をみることになるため、短時間で丁寧かつ確実な観察を行う必要があります。また、緊急入院、緊急手術が入る場合も多く、手術準備のためのゆとりがないこともあります。あらかじめ周手術期の看護についてはよく学んでおいた方がよいでしょう。
■リハビリテーションに対する知識、技術
整形外科病棟では、リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語療法)が重要になってきます。医師やリハビリテーションスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)の指示に応じてサポートを行うこともあるので、リハビリテーションに関する最低限の知識や技術は知っておいた方がいいでしょう。また、疾患や術式に応じて禁止肢位や体位、日常生活の注意点なども細かく違ってくるので、細かく理解しておく必要があります。退院指導などで、看護師が患者への日常生活の注意点など指導を行う際にもリハビリテーションの知識は必要になってきますので、説明できる程度には理解を深めておければいいですね。
■義肢装具の種類や装着方法に関する知識
整形外科では術後や切断・麻痺などによる四肢体幹運動の機能障害に対して、義肢や装具を装着することがあります。どのような装具があるのか、また装具の装着方法や注意点などについて、患者に説明する必要が度々ありますので、学んでおいた方がいいでしょう。
■整形外科特有の手技(包帯法、シーネ固定、ギプス、直達・介達牽引など)
包帯法やシーネ固定、ギプス介助なども重要です。他にも整形外科特有の直達・介達牽引などの手技は病棟で行うことが多いので、必ず押さえておきましょう。
■清潔操作・感染予防
整形外科病棟では、他の病棟よりも清潔操作や感染予防を重要視しています。特に創部感染には敏感で、創部の観察や感染の兆候がないか看護師はしっかり観察を行い、少しでも異変があればすぐに医師に報告します。看護師は創部の清潔が保持できるように、注意しなければなりません。創部処置の際にも、確実な清潔操作が求められますので、清潔操作・感染予防についての知識や技術は身につけておくとよいでしょう。
■転倒・転落予防
転倒・転落予防は整形病棟の看護師にとって重要で、整形外科病棟ではADLが低下している患者が多いので、転倒・転落によりさらなる受傷を起こさないようよう注意しなければなりません。そのため、看護師は、リハビリテーション状況を常に把握し、患者のADLを見極め、環境整備やこまめな声掛けを行うなど転倒・転落予防に日々注意を払っています。
■コミュニケーション力
整形外科病棟では、元気な患者が多く、様々な年代の患者がいるので、どんな場面にも対応できる柔軟なコミュニケーション力が求められます。入院や手術件数も多いので、オリエンテーションや日常生活動作や指導なども行う場面が多く、時には障害が残ってしまった患者への心理的ケアも行うことがあります。また、患者以外にも医師以外にも薬剤師、リハビリテーションスタッフ(理学療法士・作業療法士言語聴覚士)、義肢装具士、医療ソーシャルワーカー(MSW)など、多くのスタッフと接する機会が多いので、こまめに情報をやり取りし、連携を行いながら日々の業務をこなす必要があります。
4.整形外科病棟の看護師の1日の仕事の流れは?忙しさを乗り切る方法は?
時間 | 仕事内容 |
9:00 | 検温・点滴/医療処置・リハビリテーション介助患者の移送/搬入・清潔ケア・手術患者の術前処置・オペ出し |
10:00 | 看護記録 |
11:00 | 昼休憩 |
12:00 | 食事介助、口腔ケア |
13:00 | カンファレンス・検温 |
14:00 | 入院患者の対応(アナムネ、病棟オリエンテーション、手術物品準備)・ オペ迎え・バイタルサイン測定・リハビリテーション介助・点滴 |
15:00 | リーダー看護師へ報告 |
16:00 | 夜勤者へ申し送り・記録 |
5.整形外科病棟の看護師に転職するメリット・デメリット
■急変が少ない
整形外科病棟では患者の急変が少なく経験が浅かったり救急対応に自信のない看護師も安心して働きやすいです。
■幅広い年代の患者に接することができる
患者さんは先述の通り子供から老人まで幅広いので、看護師としていろんな年代の患者さんとのコミュニケーション力を磨いたり幅広い経験ができます。
■元気に退院していく患者を見ることができる
患者のほとんどが手術目的で入院してくるので、術後回復して元気な状態で退院することが多いです。整形外科病棟の看護師は患者の回復過程を支え、共に喜びを分かち合うことができますので、回復過程を援助したい看護師にはお勧めです。
■整形外科特有の知識や手技を学べ、専門性を磨ける
整形外科特有の疾患や看護手技、知識、リハビリテーションなどを学ぶことが出来ます。整形外科を経験した後、回復期リハビリテーション病棟などの専門病棟や回復期リハビリテーション認定看護師などでスキルアップを目指すことも可能です。
■ADL介助や移動・移送が必要な患者が多く、体力がいる
基本的にケア度が高い患者が多いので、日常的に力仕事が多く、腰を痛める看護師も多いです。体力に自信のない看護師にはあまりおすすめできないかもしれません。
■急変や命に関わる症例は少ないので、高度な看護スキルを身に付けることができない
急変が少なく看取りもほとんどないので、高度な看護技術は身につきにくいです。また整形外科病棟で行う看護は特有の独自性が高いものが多いので、もし他の診療科に転職するとキャリアが分断したような気持ちになるかもしれません。
■患者の意識はしっかりしているためコミュニケーションに悩むケースも
整形外科病棟の患者さんは高齢者が多い病棟と違って、急性期で入院している若い人も多いため意識はしっかりしていることが多いです。それゆえに看護師とのコミュニケーションを求めたり、時には文句やクレームを強く言う人もいます。その点で苦労する人もいます。
■忙しくバタバタしていることが多く患者と向き合う時間がれないことも
ADL介助やリハビリなどで多忙な為、せわしなく業務をこなす中で、なかなか患者とゆっくり関わる時間がとれないという悩みも聞きます。特に脊髄損傷や麻痺、四肢切断など障害が残った患者に対する心理的ケアが不十分になるなど、患者と向き合う時間がとれず悩む場合もあるようです。
整形外科病棟といっても、その病院がどのような分野に力をいれているかによって、看護師の業務内容は大きく変わってきます。そこで転職する際には「その病院にどんな分野があって」「どんな手術内容や患者が多いのか」など事前にリサーチすることが必要になってきます。そうは言っても自分ひとりで調べるのには限界がありますし、仕事をしながら転職を考えている場合はなおさら大変です。そこでおすすめなのが、マイナビ看護師などの看護師転職エージェントを活用する方法です。看護師転職エージェントを用いれば病院の情報を手軽に知ることが出来ます。また、病棟の忙しさや人間関係など、実際に働いていなければなかなか知ることができない情報を把握している場合もあり、転職の際には非常に心強いサポーターになります。未登録の方はサイトをチェックしてみましょう。