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2018年に行われたある調査では、LGBT層は約9%であり、11人に1人はLGBT層であることが示されています。医療の現場でも、カミングアウトの有無に関わらず、普段からLGBT層の患者に出会っている可能性は高いといえるでしょう。このようにLGBTは社会的にも認知されつつありますが、「LGBT医療」という言葉はご存知ですか?今回はLGBT医療について看護師が知っておくべきことをまとめました。

1,日本のLGBT層の割合はどのくらい?LGBT医療とは?

LGBT調査2018」によると、2018年10月に全国で20〜59歳の60,000名対象に調査をしたところ、LGBT層は8.9%となり、これは2015年(7.6%)・2012年(5.2%)に比べると年々増えている結果となっています。さらに「LGBT」という言葉の浸透率は68.5%であり、最近では女性や若い世代にとくによく知られるようになっています。加えて、調査を受けた人の全体の約70%がLGBTについて正しい理解を得たいと思ってることも注目すべきでしょう。

このようにLGBTについて世間でも広く知られるようになってきています。2018年のこの調査によれば、11人に1人がLGBTのいずれかであることからも、普段の生活や医療機関においてLGBTである人や患者さんに日常的に関わることも十分ありうることを示しているといえます。

それで「LGBT医療」という言葉についてですが現時点において実はLGBT医療という分野はありません。しかし、LGBTの人たちが医療を受ける上で抱える問題を知ること・医療者としてどう対応すべきかの知識やその方法を学んでおくことは大切ですし、今後明確な分野として「LGBT医療」という言葉が普及するかもしれません。ここではLGBTの方の性転換なども含めてLGBTの方に関わる医療を「LGBT医療」と呼ぶことにします。

「LGBT医療」では「性的指向と性自認の違いを知る」ということが大事です。「性的指向」とは性愛の対象となる人がどのような性別であるかということです。女性の同性愛者はレズビアン、男性の同性愛者はゲイ、もしくは男性と女性の両方が恋愛対象であればバイセクシャルなど、多くの人が思春期のころに自らの性的指向に「気づく」ものとされています。一方で、「性自認」とは「性の自己認識」であり、自分の性別をどう認識しているかをさします。性自認では、今現在ある自分の身体と心の性が一致しない人たちもおり、このような性自認のある人たちをトランスジェンダーといいます。一口でLGBTといってもこのように性的指向や性的自認など様々な捉え方があることを知ることが大切です。最近では、「LGBTQ」といって『Q=Quistioning』のように自分の性別がわからない・意識的に決めていない・今現在模索中である人をさすこともあります。

2,LGBT医療での問題点とは

LGBT当事者を理解するには、上記のような性的指向と性自認の違いを認識した上で関わることが大切です。しかし、現在の医療現場ではLGBT当事者に対する理解や知識不足から様々な問題が生じているといわれています。LGBT当事者が感じる問題点と医療者側の問題点をみてみましょう。

LGBT当事者が感じる問題点
・医療者から配慮のない・差別的な言動に傷つくことがある
・病院受付けで名前や性別が合っていないことを確認され嫌悪感を抱く
・自分が自覚する性とカルテの性別が合っておらず否定された気持ちを抱く
・同性のパートナーがいてもキーパーソンとして認められない
・以上のようなことから医療機関を受診することをためらってしまう

医療者側の問題点
・LGBTに対する正しい知識が不足している
・LGBT患者と関わる機会も少ない・LGBT患者がいても気づかずにおりどう接すればいいのかわからない
・医療者の中にもLGBTの人々に対する偏見をもつ人がいる
・LGBT患者に対するマニュアル整備がされていない

 

このようにLGBTを取り囲む医療では、医療を提供する側の知識や理解不足が元となり、様々な問題が生じていることがわかります。それではLGBTの人々に医療を提供する側としてどのような配慮ができるのでしょうか。基本的な姿勢として、LGBTである患者に対して彼らたちを受け入れる姿勢を示すことが大切です。LGBTに対する知識不足から偏った考えを持つことなく接し、患者の背景にある性自認や性的指向を自分たちだけの判断で決めつけないようにします。相手のプライバシーを守りながら、傷つかない言葉を選んで患者への質問の仕方も工夫するとよいでしょう。もし聞きにくいことがあればメモにして聞いたり、カルテ内の性別を記載する欄も患者本人に見えないような配慮も必要です。さらに、患者にかかりつけのジェンダークリニックがあれば連携して情報を共有することも考えられます。

3,LGBTの患者に関わる看護師が気をつけること

では、実際に看護師がLGBTである患者に関わるときには、何を気をつけるべきなのでしょうか。患者にとって看護師はときに医師より密に接する機会も多く、より細かな配慮が必要になります。まずはLGBTである患者の性的指向や性自認をなるべく正確に把握することです。そしてその情報から、診察上で何に配慮すべきかを見極めて事前に医師やそのほかスタッフと情報共有します。

例えばトランスジェンダーである患者が診察でも他人に胸を見せることを苦痛に感じる人もいます。その場合には、なぜその診察が必要なのかを看護師がきちんと説明することが大切です。診察を受ける前には、LGBTに対する医師の理解度や受け止め方を見極め、患者が苦痛を感じないような状況を作るのも看護師の大事な役割です。もちろん、看護師自身が自らの知識の偏りなどにより看護師としての患者アセスメントに偏見を加えないようにすることも忘れてはいけません。

「LGBTフレンドリー」な病院・クリニックがある?

一方でLGBTである患者に対して配慮した医療を行うことの大切さを認知はしているものの、実際の診療では多忙で配慮が行き届かないこともあるかもしれません。その場合は患者もやはり不安・不快な思いを抱きやすく、医療を受けることが必要であるにも関わらず、受診自体を遠ざける傾向があることも指摘されています。本当は受診が必要なのにLGBTであるがゆえに受診ができない、といった状況を避けるために「LGBTフレンドリー」を掲げているクリニックというのが存在します。

東京都内では「華園医院」「しらかば診療所」などLGBTフレンドリーを掲げているクリニックも多くあり、診察項目も広く行っています。さらに大学病院においては、「岡山大学病院にジェンダークリニック」があり「性別違和の悩みをもつ患者様に対応する、日本屈指の機関」として知られています。そこでは精神科神経科や婦人科・泌尿器科・形成外科の医師や臨床心理士などがチームとなり診療を行ったり、メイク・ボイスレッスン・家族茶話会といった生活支援プログラムなどが行われているのも特徴です。

 

LGBT医療を実践している病院やクリニックで 働くためには

LGBTである患者に対する医療に興味を持ち、LGBT医療を主に実践する病院やクリニックで働きたい場合はどうすればいいのでしょうか。一番の近道は、LGBTフレンドリーな医療機関を探して求人情報を確認することです。その際に、転職サイトを通してみるのもひとつの方法でしょう。さらに一般向け・医療従事者向けのLGBT関連の研修に参加をして知識を得ておくことも転職時に役立つといえます。

医療者は患者がLGBTであるか・ないかに関わらずどの患者に対しても、常にプロとして接することが大切です。今後性的マイノリティであるLGBTの患者に接する機会は増えていくことが予測されるなかで、患者の中にも多様な性が存在することを理解しておくは必須といえるでしょう。LGBT当事者として働く医師や看護師のLGBTに対する啓蒙活動も行われており、今後看護師としてLGBTの患者に対してどのようなケアが提供できるのかも問われています。